JR博多駅で「札幌ラーメン」が奮闘するワケ とんこつでなく「みそ」で攻勢、狙うは地元客
福岡の名物料理といえば、真っ先に「とんこつラーメン」を思い浮かべる人は多いだろう。豚骨ベースの乳白色のスープと細い麺が特徴で、「一風堂」「一蘭」のように日本国内どころか海外にもチェーン展開する店も多い。
9月のある月曜日の午前11時すぎ、福岡の玄関口・JR博多駅は、多くの女性でごった返していた。前日の夜に福岡ヤフオク!ドームで人気アイドルグループ「関ジャニ∞」のライブを堪能し福岡市内に宿泊した全国の女性ファンたちがこれから新幹線で、あるいは博多駅から福岡空港に向かって帰路に就くのだ。
せっかく福岡に来たのだからとんこつラーメンを食べて帰りたいのだろう。駅ビルの2階にあるレストラン街「博多めん街道」では、まだ昼前にもかかわらず、「だるま」「一幸舎」といったとんこつラーメンの名店に大行列ができていた。
観光客は素通り、地元客で満席
ところが、その中で客足がまばらな店があった。看板には大きく「どさんこ」の文字。道産子(どさんこ)とは北海道在来の馬や北海道出身者を意味する。「札幌ラーメン」を出す店だ。正式店名は「博多川端どさんこ」。メニューには「みそラーメン」「塩バターラーメン」といった札幌ラーメンの定番が並ぶ。
観光客の多くはこの店の前を素通りする。それはそうだろう。わざわざ福岡に来たのに札幌ラーメンを食べようとは、普通思わない。しかし、12時を過ぎた頃から少しずつ客が増え始め、店内はほぼ満席となった。店内の様子を見ると、手ぶらでワイシャツ姿の男性が多い。近隣オフィス街のビジネスマンなのだろう。それにしても、JR博多駅になぜ札幌ラーメンの店が出ているのだろうか。
博多めん街道を運営するのはJR九州(九州旅客鉄道)の子会社、JR博多シティだ。同社で博多めん街道のテナント営業を担当する大庭敏夫・営業部主査に話を聞いたところ、答えは明快だった。「その味にほれ込んだから」。札幌の有名店を誘致したのではなかった。大庭氏が地元の人に話を聞いて回り、自身も博多の著名なラーメン店をいくつも食べ歩いて、「これならいける」と判断したのが、川端どさんこのラーメンだったのだ。
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