JR博多駅で「札幌ラーメン」が奮闘するワケ とんこつでなく「みそ」で攻勢、狙うは地元客

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確かに、中洲の対岸、上川端町にある川端どさんこは昼時には20~30人の行列ができる人気店であり、その味は保証付きだ。そもそも、この店は、なぜ博多の地で札幌ラーメンを出しているのだろうか。川端どさんこを運営する岩永商店の岩永太郎代表に話を聞いた。

1974年生まれの岩永氏は博多生まれの博多育ち。川端どさんこが創業したのは1970年というから、岩永氏が生まれる前だ。「当時、博多は北海道ブームで、北海道料理が人気でした」と岩永氏は言う。そんな折、岩永氏の父・倫夫氏が知人から「札幌ラーメンの店をやらないか」と誘われた。倫夫氏は雇われ店長として厨房で腕を振るった後、オーナーである知人から店を譲り受けた。

岩永氏は子供の頃からラーメン作りを仕込まれていたが、「博多は独立独歩の精神を大事にしているので」(岩永氏)、大学卒業後は上京してアパレル関係の会社に就職。しかし、両親の「帰ってきて店を手伝ってほしい」という声に心を動かされ、2000年に帰郷、それからまもなくして倫夫氏から経営を引き継いだ。

東京からの出張者が最初の顧客

ところで、札幌ラーメンのスープはみそ味や塩味が主流で、麺の太さもとんこつラーメンとは異なる。なぜ博多で札幌ラーメンが受け入れられたのだろうか。

その理由を岩永氏が明かす。創業期の北海道ブームが一段落した後の主要な顧客層は、1975年に山陽新幹線の全通で東京から出張でやってきたビジネス客だったという。「当時のとんこつラーメンは今ほど濃くなく、逆ににおいが強くて、関東の人の口に合わなかったようです。それで関東の人が福岡出張時に食べられるラーメン店があるという話が口コミで広がり、しだいに地元の人も足を運んでくれるようになりました」。

博多っ子がほれ込んだ川端どさんこのラーメンとやきめし(写真:JR博多シティ)

もちろん岩永氏も博多っ子に好まれるように味の改良を続けた。みそやしょうゆなどの調味料は福岡産や九州産を使用。努力を続けた結果、地元に受け入れられるようになり、今では「川端どさんこは札幌ラーメンを博多のソウルフードまで高めた」(地元誌)とさえいわれる。ちなみに一番人気は「特製みそラーメン」。「やきめし」も人気だという。

さて、話は博多めん街道に戻る。このレストラン街は2009年にオープンした。とんこつラーメンを主軸としつつも、「めん街道」という名前のとおり担々麺や皿うどんなどほかの麺類の名店も入っている。「博多にはとんこつラーメン以外にも麺類の名店が多いので」と、前出の大庭氏はテナント構成について説明する。

ターゲットとする顧客層は観光客や新幹線出張でやってきたビジネス客。折からのインバウンドブームで外国人客も順調に増えている。だが、大庭氏はそれでは満足しなかった。「観光客頼みだけでは客足の波が大きい。地元の人も通ってくれるような店を入れたい」。

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