南海電鉄「なかもず素通り」問題に意外な背景 通勤定期「最安ルート」支給で悲喜こもごもも
東海道新幹線に従来の「ひかり」よりも速い「のぞみ」が1992年に登場した際、一部列車で名古屋駅を素通りするダイヤが組まれたことが「名古屋飛ばし」として話題になった。
関西ではいま、大阪府堺市で「中百舌鳥(なかもず)飛ばし」が問題となっている。所要時間の短縮を狙った名古屋飛ばしは1997年に解消したが、中百舌鳥飛ばしの背景はもっと複雑だ。
中百舌鳥は泉北高速鉄道線(泉北線)に広がる泉北ニュータウンの住民が大阪中心部に向かう際の結節点である。南海電気鉄道(南海)高野線と泉北線は中百舌鳥で相互乗り入れを行っており、泉北線利用者は乗り換えをせずに高野線の終着駅・なんば(難波)に向かうことができる。また、すぐ近くには大阪市営地下鉄御堂筋線の始発駅であるなかもず駅もあり、なんばだけでなく淀屋橋や梅田にも行くことができる。
御堂筋線への流出防止が目的?
中百舌鳥飛ばしが表面化したのは1987年、御堂筋線のなかもず駅開業時にさかのぼる。それまで高野線経由で大阪中心部に向かっていた泉北線利用者の多くが、中百舌鳥で下車して御堂筋線に流れることが予想された。
御堂筋線なかもず駅開業の直前になって、南海と泉北線の運営会社で大阪府が設立した第三セクター・
それから時は流れ2008年、大阪府は大阪府都市開発を南海に売却する方針を打ち出した。「泉北線と南海が同一グループになれば、運賃も統合されるのではないか」――。泉北線の利用者らが色めき立った。大阪中心部に向かう際、泉北線と南海の高野線では乗り継ぎ割引運賃制度が実施されていたが、割引額はわずか20円。大阪中心部からさほど離れていないにもかかわらず、他地域を走る路線の運賃と比べると割高感は否めなかった。
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