南海電鉄「なかもず素通り」問題に意外な背景 通勤定期「最安ルート」支給で悲喜こもごもも

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大阪府都市開発の買収には南海だけでなく、米国の投資ファンド・ローンスターも名乗りを上げた。ローンスターが提示した買い取り価格は南海よりも高かった。にもかかわらず、最終的に同社を手中に収めたのは南海だった。その理由は、南海の提示する乗り継ぎ割引の幅がローンスターよりも大きかったこと。買収価格が高くても住民にはメリットが少ない。ローンスターは住民感情を読み間違えたのだった。

2014年、大阪府都市開発は泉北高速鉄道と名称を変更し、南海グループの一員となった。南海は公約どおり、乗り継ぎ割引の幅を20円から100円へと大幅拡大した。

さらに南海は泉北線の利便性向上を狙って、2015年に泉北線の各駅と南海の主要駅を短時間で結ぶ有料特急「泉北ライナー」を朝夕の時間帯に導入した。510円の特急料金がかかるものの、朝夕のラッシュ時に座れるメリットは何ものにも代えがたい。泉北ライナーはその後のダイヤ改正で増発されるほど好評を博した。

中百舌鳥素通りで駅ホームが危険な状態に

南海電鉄と泉北高速鉄道が共同で使用する中百舌鳥駅(記者撮影)

だが、泉北ライナーが華々しく登場する背後で、中百舌鳥に停車する列車の本数は大幅に減ってしまった。朝は中百舌鳥に停車する列車に客が集中し、さらに夕方は御堂筋線から乗り換える客が中百舌鳥でなかなか列車に乗れない。中百舌鳥駅のホームは朝夕ラッシュ時に客があふれるという事態となった。

「ホーム滞留客が大幅に増えて非常に危険だ」。中百舌鳥駅の地元・堺市には、乗り継ぎが不便、危険という市民からの声が多数寄せられ、市は南海にダイヤ改正に関する申し入れを行った。

その結果、今年8月のダイヤ改正で、夕方以降の時間帯においては、特急以外の泉北直通列車がすべて中百舌鳥駅に停車する準急行に変更された。これで夕方の混雑は解消されたが、朝の時間帯の問題はそのまま残った。市も「百点満点ではない。さらなる改善に向けて引き続き申し入れを行っていく」(交通政策課)としている。

朝ラッシュ時に中百舌鳥駅に停車する列車を増やすことができない理由について、南海側は「ダイヤ編成上難しい」と語る。朝は夕方よりも車内の混雑が激しいため、中百舌鳥駅停車に伴う乗降時間増加や遅延リスクを避けたいという考えはわからないでもない。泉北線利用者の間でも意見は分かれており、「区間急行はかなり混んでいるので、乗り降りに時間がかかる中百舌鳥に停車する必要はない」という声もある。

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