東急が池上線を「無料乗り放題」にするワケ 仰天イベントに透ける最強私鉄の危機感とは
東京急行電鉄(東急)は10月9日、五反田(品川区)と蒲田(大田区)を結ぶ池上線を誰でも終日乗り放題とするイベントを開く。首都圏で大手私鉄が「無料で乗り放題」の取り組みを行うのは初めてだ。
「開通90周年記念イベント」の一環だが、1928年6月に全線開業した池上線が開通90周年を迎えるのは実は来年だ。1年弱フライングしてまで開催することになったのはなぜだろうか?
昭和の面影が残るというが・・・
全長10.9㎞の東急池上線は通勤路線でありながら、風情豊かな路線として知られる。沿線に日蓮宗の大本山である池上本門寺、桜の名所として知られる洗足池公園や目黒川などの人気スポットがある一方で、戸越銀座などには昭和の面影を残す地元住民のための商店街もある。
とはいえ、東急の二枚看板である東横線と田園都市線に比べると、池上線の影は薄い。1日の平均利用者が東横線121万人、田園都市線126万人であるのに対し、池上線はその5分の1程度の23万人にとどまる。
昭和の面影が残る沿線風景というのは、裏を返せば二子玉川のような東急の沿線開発から置き去りにされてきたということだ。「何十年もそのまま使われている駅舎が好き」という、地元愛にあふれた沿線住民もいるが、古さを敬遠する層にとって、池上線沿線は「住みたくなる街」の対象にはならない。
人口減少社会の到来は首都圏にも着実に迫りつつある。池上線の沿線自治体である大田区と品川区は「全国の動きと30年ずれており、今も大田区の人口は毎年4000~5000人ずつ増えている」(大田区の松原忠義区長)、「品川区も人口は毎年5000人ずつ増えている」(品川区の濱野健区長)と余裕を見せるが、東急側は「2020年をピークに減少に向かう」と危機感を隠さない。
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