東急が池上線を「無料乗り放題」にするワケ 仰天イベントに透ける最強私鉄の危機感とは

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リニューアルされた東急池上線の戸越銀座駅。壁から屋根、ベンチに至るまで「木」をふんだんに使っている。(記者撮影)

沿線の人口減少は運賃収入減少につながるとあって、鉄道会社にとって沿線活性化は喫緊の課題だ。池上線の利用者は順調に増え続けているとはいえ、将来に備え東急は昨年から手を打ってきた。

昨年12月、戸越銀座駅を開業以来初めて約90年ぶりにリニューアル。今年6月には池上駅の駅ビル化にも着手している。

それでも「もっとスピード感を出す必要がある」と語る野本弘文社長の言葉からは焦りすら感じられる。その理由は池上線の認知度の低さにあった。

「池上線の認知度は54.3%。東横線や田園都市線に比べ認知度が低く、イメージも希薄」。東急が今年5月、引越し意向がある20~40代の男女を対象に実施したアンケート結果である。ある程度予想していたとはいえ、池上線が抱える現実を数字で見せつけられた格好だ。

認知度を高めるためには、まず沿線に足を運んでもらう必要がある。東急が考え出したのは、池上線全線が1日乗り放題となる「池上線フリー乗車デー」。運賃を無料にするから沿線に来てほしい、という極めてシンプルな戦略だ。国内の鉄道では「無料で乗り放題」はほとんど例がなく、思い切った決断といえる。

「ブラタモリ」模した地形ツアーも

東急が10月9日に池上線で実施する「無料乗り放題」イベントの乗車券(大人)(写真:東急電鉄)

イベント当日に沿線外から訪れた人に沿線のよさを知ってもらうため、自治体や地元も協力を惜しまない。当日はさまざまな「ツアー」が実施される。人気テレビ番組「ブラタモリ」さながらの「池上線地形セミナー&ツアー」をはじめ、グルメツアー、鉄道ファン向けツアーなど、いずれも参加したくなるものばかりだ。

当日にはたしてどれだけの人が池上線を利用するのか。「まったく見当がつかない。だが、少なくとも1日平均利用者数の23万人は下回らないようにしたい」と東急鉄道事業本部沿線企画課の平江良成課長は語る。控えめな目標にも見えるが、「休日の池上線利用者は平日ほど多くないので、決して控えめではない」(東急広報部)という。

はたして東急の思惑どおり、今回のイベントに始まる一連の池上線活性化策によって認知度が向上し、来訪者が増え、街に活気が生まれ、池上線沿線が住みたい街となるか。そのためには池上線の各駅だけでなく、五反田と蒲田という両ターミナル駅の活性化が重要となる。これも東急単独ではなく自治体や地元と一体となった取り組みが必要だ。

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