カタルーニャ州と中央政府との歩みよりの兆しなのだろうか。住民投票は違憲との立場を採る中央政府であるが、6日になって、ようやく10月1日の独立の是非を問う住民投票を力づくで阻止しようとし、多数の負傷者を出したことを謝罪した。カタルーニャ州議会は、当初9日に予定されていた議会の開催を1日延期した。憲法裁判所が、州議会の開催の差し止めを命じたことに配慮した判断かもしれない。
しかし、10日開催の州議会では独立宣言を強行する可能性はあり、その場合、中央政府は憲法155条に基づく自治権停止という強硬措置で応じると見られる。独立派と治安部隊との再度の衝突にも発展しかねない。
市場は「離脱はない」と見ているが
事態打開の目途は立たないものの、市場の反応は冷静だ。スペインの株価、国債価格も下落(利回りは上昇)している。だが、国債利回りは、6日の段階でも10年物で1.7%。銀行の不良債権問題の懸念された11~12年のように、自力での資金繰りが困難となる危機ラインの8%に近づくような気配はない。
スペインの問題が、域内に伝播する兆候もない。債務危機の局面ではスペインと連動する傾向が強かったイタリア国債は落ち着いている。スペインの隣国ポルトガルの国債利回りは、9月半ばに大手格付け会社が5年半振りに格付けを引き上げた効果が効いている。
為替市場では、住民投票前の水準よりユーロ安になっているが、1ユーロ=1.18ドル台から1.17ドル台に下がった程度。カタルーニャ問題よりは、米国の利上げ観測の高まりによるドル高圧力が、ユーロドル相場の主たる変動要因と考えられる。
カタルーニャの分離独立問題に市場の反応が冷静なのは、事態の収拾には時間がかかるとしても、このままカタルーニャが独立の道を歩むとは、市場参加者の多くが考えていないからだろう。
カタルーニャはスペインのGDP(国内総生産)の2割を占める。観光資源に恵まれ、多くの外国企業が立地するなど産業基盤も充実している。それでも、中央政府の理解を得ない「無秩序な独立」は、経済の深刻な混乱を引き起こすだろう。
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