経済面からカタルーニャ独立の鍵を握るのはEU(欧州連合)との関わりだ。独立派のスペインから独立すれば豊かになれるとの主張は、独立後もEU加盟国であり続けることが前提だ。だが現実には、独立国となれば、新たに加盟手続きをとる必要がある。EU加盟の審査は、EUの法規制の適合性を審査するものなので、EU加盟国に属していたカタルーニャの場合は問題なくクリアできる。
だが、新規加盟の手続きで、既存の加盟国、つまりスペインも含めた全会一致の承認が必要なことが大きな障害となる。スペインは当然反対票を投じるだろうし、国内に分離独立の火種を抱える国も同調するだろう。法の支配はEUの基本原則。違憲とされながら強行された住民投票の結果に基づくカタルーニャの独立を、EUが認めることは困難だ。
現地企業はユーロ圏離脱リスクを意識せざるを得ない
EU加盟国でなくなれば、ユーロを法定通貨として利用し続けることはできなくなるため、独立は銀行経営に大きく影響するおそれがある。市場の反応が全体に平静だったが、カタルーニャ州を本拠地とするサバデル銀行、カイシャ銀行など銀行株の下落が目立ったのはそのためだ。
サバデル銀行、カイシャ銀行は、5日、6日に相次いで、本社登記地を隣接するバレンシア州に移転することを決めた。住民投票後、両行は穏やかながらも預金の流出に見舞われたこともあり、さらなる政治的な混乱のリスクに備えて、ECB(欧州中央銀行)の流動性供給が確実に受けられる体制作りに動いた。現在、ユーロ参加国の銀行のうち120の大手行についてはECBが直接監督しており、両行ともECBの直接監督下にある。ユーロ圏そしてEUに本拠地のある銀行であるかどうかで、流動性供給や監督体制への信頼感も大きく変わる。
事業会社の間でもマドリッドなどへの本社移転を決めるケースが出始めている。カタルーニャ州が強硬独立の旗を降ろさなければ、移転を決めざるを得ない企業はさらに増えるだろう。
カタルーニャ当局が明らかにした住民投票の最終結果によれば531万人の有権者の228万人が投票に参加し、およそ9割にあたる204万人が独立に賛成した。合法的な住民投票ではなかっただけに、独立への強い意志を持った有権者ほど投票に足を運んだ割合が高かったと思われ、独立賛成9割という結果は、カタルーニャ市民の民意の反映とは言えない。
さらに、独立に票を投じた有権者の間でも、独立には、財政面での中央政府からの権限の奪還といったベネフィットばかりでなく、EU、ユーロ圏からの離脱という重大なコストを伴いかねないことが、どこまで理解されていたか疑わしい。
カタルーニャ州政府とスペイン中央政府には、市民の生活や企業の活動に混乱が広がらないよう、対話による解決策を探る努力をしてほしい。
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