幼児教育「無償化」より大事なのはその内容だ

ヘックマンは無料にせよとは言っていない

幼児教育を無償化することよりも大事なこととは?(写真:IYO / PIXTA)
安倍晋三首相は、「人づくり革命」の一環として、幼児教育の無償化を進めるとしている。具体的には、2020年度までに3~5歳まで、すべての子供たちの幼稚園や保育園の費用を無償化するとのことだ。
幼児教育の重要性を示す論拠として定番となっているジェームズ・ヘックマン教授の『幼児教育の経済学』では、小学校以降の教育よりも、就学前の教育のほうが、教育効果が非常に高く、「投資効率」がよいことが示された。では、幼児教育を無償化することも政策として適切なのだろうか?
実は、ヘックマンは幼児教育の重要性を主張しているが、政府が推進しようとしているような無償化ではなく、所得に応じたスライド制の負担を提言している。対象者の範囲や子供の親へのケアなど、幅広く目配りしているのも特徴だ。
ここでは、ヘックマン自身が描く幼児教育の具体的な方向性について、本書の内容を一部編集のうえ掲載する。

大人になってからでなく幼少時に集中分配せよ

『幼児教育の経済学』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

貧困に対処し社会的流動性を促進するために、所得の再分配を求める声は多い。

だが、最新の研究は、再分配はある時点では確実に社会の不公平を減じるものの、それ自体が長期的な社会的流動性や社会的包容力(訳注:社会的に弱い立場にある人々を排除・孤立させるのではなく、共に支え合って生活していこうという考え方)を向上させはしないと主張している。

事前分配──恵まれない子供の幼少期の生活を改善すること──は社会的包容力を育成すると同時に、経済効率や労働力の生産性を高めるうえで、単純な再配分よりもはるかに効果的である。事前分配政策は公平であり、経済的に効率がいい。

アメリカではスキルの問題が増大している。これは社会的分極化を生み、機会や成果の不平等を大きくする。

アメリカの若者が大学を卒業する割合は上昇しているが、同時に、高校を中退する割合も上昇している。スキルの問題がもたらすもう1つの結果は、経済生産性の鈍化だ。現在の子供向けの社会政策は認知能力(訳注:IQや学力テストなどで測られる能力のこと)の向上に集中している。だが、人生で成功するには学力以上のものが必要だ。

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