幼児教育「無償化」より大事なのはその内容だ ヘックマンは無料にせよとは言っていない

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家庭訪問を含むプログラムは両親の生活に影響を与え、家庭環境の永続的な変化をもたらし、それが介入が終わった後も子供を助ける。認知能力だけに集中するのではなく、子供の性格や意欲を形成するプログラムが最も効果的と思われる。

費用は収入に応じたスライド制にすべき

3 プログラムの提供者は? 

恵まれない子供の認知的スキルや社会・情動的スキルの向上を目的とした幼少期のプログラムを計画するには、幼少期の家庭生活や文化的多様性を尊重することが重要だ。こうしたプログラムで肝要なのは、両親が援助に値するかどうかを評価することではなく、子供を助けることである。

幼少期のプログラムの目的は、あらゆる社会や宗教や人種の恵まれない子供のために、生産的なスキルや特性の基盤を育てることにある。

社会集団や社会奉仕家たちなどの民間セクターを参加させることは、公的資源を増加させ、コミュニティの支持を生み、多種多様な視点から検討することを保証する。民間と行政との共同作業が、効果的かつ文化の違いに配慮するプログラムを育成する。

4 費用は誰が負担するべきか? 

非難を避けるためにプログラムを全国一律にすることができるだろう。全国規模のプログラムははるかに費用がかかるし、公的プログラムが家族の個人的な投資に取って代わることによる死荷重(訳注:完全競争市場に政府が介入すると、得られたはずの余剰が失われる)の可能性をもたらす。これらの問題に対する1つの解決法は、プログラムは全国一律とするが、家族の収入に応じてスライド制の負担額を設定することだ。

5 幼少期の環境を豊かにするという恩恵を受けられずに思春期に達した恵まれない子供のためには、どんな方針が効果的か?

幼い頃に介入を開始すればいっそう効果的だが、思春期に達した子供に対して効果的な戦略もある。認知的スキルは幼少期に確立され、10代になってから子供のIQや問題解決能力を高めるのははるかに難しいことが、数々の証拠から示されている。

だが、社会的スキルや性格的スキルは別問題だ。これらのスキルは20代の初めまで発展可能だが、学習を向上させることから、幼少期に形成しておくのが最善策だ。思春期の子供に対する戦略は、メンターによる指導や職場での教育を通じて、意欲や性格的スキルや社会的スキルを強化するべきだ。

(翻訳:古草 秀子)

ジェームズ・J・ヘックマン シカゴ大学教授

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James J. Heckman

1965年コロラド大学卒業、1971年プリンストン大学でPh.D.(経済学)取得。1973年よりシカゴ大学にて教鞭を執る。1983年ジョン・ベイツ・クラーク賞受賞。2000年ノーベル経済学賞受賞。専門は労働経済学。

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