もう1つの代表的な批判として、「2013年以降の日本経済の復調には、2012年までの欧州債務危機が終わるなど外部環境に恵まれたためで、金融政策の効果は大きくない」との議論もよく聞かれる。だが、2014年以降は中国など新興国の経済成長の減速が続いており、むしろ安倍政権になってから外部環境は一段と厳しくなっていたのが実情である。世界経済の成長率をみると、2010~2012年は3.2%、2013~2016年は2.6%である。
これらの客観的な事実を踏まえれば、2013年に安倍政権によって任命された黒田東彦総裁が率いる日本銀行の金融緩和政策が、数々の逆風をハネのけて日本経済を復調させ、雇用環境を改善させ続けたことは明白な事実である。
希望の党は、金融政策について立ち位置を明確にせよ
ところが、9月28日に掲載された民進党のHPにおいて、前原代表は「アベノミクスは、一般の国民の皆さんの暮らしの改善にはつながらない反面、その極端な低金利政策や放漫財政は非常に危険であり、何かのきっかけで皆さんの暮らしを崩壊に追い込む可能性があります」とメッセージを残している。
安倍政権になってから多少なりとも国民の暮らしが改善したことに言及せず、「金利政策や放漫財政は非常に危険」「何らかのきっかけで皆さんの暮らしを崩壊」といった前原代表の言葉は、民進党の失敗を象徴しているようにみえてならない。政治家として「安倍政権を倒す」と政治闘争するのはいいが、その帰結として政治や国民の暮らしがどうなるのか、ほとんど提示できていないのではないか。
10月22日に行われる総選挙を経て、消費増税の是非など経済政策について与野党の間で健全な政策論争が行われるのであれば、安倍首相だけに政権を頼らざるをえなかった状況は、多少なりとも改善するかもしれない。ただ、デフレと不完全雇用の状況下での金融緩和の不徹底や増税などの経済失政は、今後避けられるのだろうか。
希望の党などの新たな野党の誕生で、健全な論戦につながる経済政策を掲げることを期待したいがそれは難しそうである。希望の党は、消費増税凍結と企業への内部留保課税をセットにするようだが、一方で公共事業の削減を打ち出すなど財政政策全体をどうするか不明である。かつての民主党の政権公約に似ている。
最重要政策の金融緩和政策については「当面維持した上、円滑な出口戦略を政府日銀一体となって模索する」としている。インフレ目標2%の重要性を認識しているかを含めて、金融政策について建設的な議論は期待できないように見える。以上の総需要安定化政策への考え方は、希望の党が民進党と同じ失敗を繰り返しかねないことを示している。
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