希望の党は、民進党と同じ道を辿りかねない 「正しい経済政策」がなければ二の舞いだ

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この経緯を正しく理解することは、今後の日本経済、金融市場の先行きを考えるうえで重要だろう。これまでの本連載では、民進党(民主党)が主張する経済政策について、批判的に取り上げてきた。そうした批判に対して、同党がリアリズムをもって正面から向き合わなかったことが、致命傷になったように筆者には思われる。

日銀の金融緩和政策を過小評価した批判勢力

まず、2012年までの民主党政権と2013年以降の自公政権における、失業率や有効求人倍率など労働市場などの各種指標を比較すれば、経済パフォーマンスの差は歴然である。言うまでもないが、国民生活に直結する経済環境を改善させられるかは、国民の投票行動や政権支持率に直結する。

また、2012年末以降の日本経済復調については、その多くをもたらしたのは、日本銀行の金融緩和強化である。もちろん、政府が日銀の金融政策の判断に直接介入することはできない。(1)日本銀行に2%のインフレ目標を課し、(2)「世界標準」の総裁・副総裁の人選、を発足直後の安倍政権が実現させて日本銀行の金融政策運営が大きく変わったのである。

もはや「金融政策によってバブルが起こるだけ」など2013年当初からさんざん聞かれた批判を信じる人は少数派だろうが、金融政策を重視する筆者の見方に対しては、いくつか反論がありうるだろう。その1つは、アベノミクスのメニューのうち、第2の矢、第3の矢が重要でより効果があった、というものだろう。安倍政権になって「放漫財政政策が行われた」などとメディアでも散見される。

だが9月11日のコラム「『前原民進党』の経済政策に期待できない理由」
でも述べたように、2013年以降、財政政策はほぼ一貫して成長率を押し下げる方向で作用、つまりGDP成長率を押し下げてきた。また、第3の矢である成長戦略についても、海外訪日客増大は円高修正と訪日客のビザ規制緩和が相乗して大きな成果となったが、これによって0.5%程度GDPの水準が押し上がったにすぎない。それ以外の成長戦略によるGDP押し上げは、ほとんど観察されない。

一方、日本銀行の試算によれば、金融緩和政策によって2013年からの3年間で、最大4.2%GDPを押し上げた。2016~2017年まで金融緩和が続いていることを踏まえれば、5年弱の累積的なGDP押し上げは明白である。

金融緩和強化を起因に雇用環境改善が続いていることは、日銀自らによる試算である点を割り引いても、明らかである。経済政策を議論する際に、データを踏まえた客観的な議論が必要になるが、2013年当初から日銀を批判している論者からは、建設的な議論はほとんどみられないのが実情である。

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