「有給取得を嫌がる上司」にどう対抗すべきか 正面対決するより、もっと戦略的に

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有休は入社した半年後から毎年付与されて、繰り越せるのは2年まで。それ以降は消滅してしまいます。法律的には、買い取りは違法とか、退職時の消化のさせ方とか、いろいろあるみたいですが、そもそも、働く人の権利であり、理由を問わずに取得できるはずの有休が使えない、それも独身者のリフレッシュ目的だと申請しにくい、というのは、法律というより社風の問題のほうが大きいのかもしれません。

昨今の「働き方改革」の流れの中では、長時間労働の問題だけでなく、この年次有給休暇の取得率についても、企業が取り組むべきテーマとして注目されていますが、まだまだ成果は出ていないようです。

働くからにはモーレツでなければ!という時代だった

私自身が会社員だった頃は、まだモーレツ社員が美徳な時代でもあったので、リフレッシュ目的で有休を申請する、という発想そのものがあまりありませんでした。実際、旅行はいちばん高い時期にしか行けないし、実家に帰るのもモロに帰省ラッシュオンタイムだし、比較的自由に長期休暇が取れる企業に勤める友人がうらやましいと思ったことは、もちろん何度もあります。

それでも、それほど「おかしい!」と思わなかったのは、働くからにはモーレツでなければ!と思い込んでいたからでしょうね。そんな私が管理職になり、メンバーからの申請を受けるサイドになった当初は、メンバー時代のメンタリティからまったく脱することができませんでした。特に忙しい時期に1週間連続で休みたいとか、月末や決算期などの最終日の有休申請だとかは、理由をせんさくした揚げ句に、却下したり別の日にしてもらったりと、ダメ上司の典型でした。今なら会社から厳しい指導が入るところで、未熟だったと心から思います。

ただ、振り返ると、そういった判断をしていたいちばんの理由は、メンバーにモーレツ社員像を押し付けたいと思ったからではなく、誰かだけが休んで誰かは働く、というバランスを欠いた状態が困ると思っていたからでした。今でも、かつての私と同じような対応をしてしまう管理職がいるとすれば、その人も「あなただけを特別にできない」と思っている可能性が高いと思います。

もっと言うと、普段の仕事ぶりが緩くて周囲に迷惑をかけがちだったり、量も質も今ひとつなレベルのメンバーだったりすると、「休んでいる場合なの?」などと思ってしまっているかもしれません。つまり、有休を取りたいという人の仕事ぶりと、全体とのバランスで、管理職の判断が変わってきてしまうことがある、ということです。

社風というと大きいけれど、要は申請を受ける管理職がどのような判断をする人かによって、有休の取りやすさが変わるわけです。だとすれば、自分がどのように評価されているかということと、自分だけでなく、ほかの人たち、職場はどういう状態か、ということをちゃんと見極めながら、振る舞いを考えたほうがおトクです。管理職の立場になって考えてみると、波風の立たない申請の仕方が見えてくるかもしれませんよ。

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