さて、その思いをどう仕事に結び付ければよいか、との問いですが、まずは友野さんとして感じた「思い」とは何ぞや、を問う必要があります。
頂戴した文章を拝見するに、おそらくそれはフィリピンにおける経験をきっかけに感じた「世界には格差が存在し、自分は相対的に恵まれた環境にいる」という認識からくる思いと、「自分が見て感じたことを自分なりの言葉でもって世の中に伝えたい」というコミュニケーション面での思いだと思われます。
この2つをつなげると、「具体的経験はあるのに伝えられない」というもどかしさ、ということになろうかと思われます。
そう考えますとおそらくですが、伝えられないのはたった1つの具体的事例「しか」知らないからだと思われます。
全体感や相対感を学ぶ
たとえは異なりますが、実はこれ、20代前半から中頃に私自身が仕事を通じてもっていた危機感とまったく同じです。
私は卒業後すぐに当時としては珍しいベンチャー企業に飛び込みましたが、ベンチャー企業は大企業と違って研修があったり、仕事を教えてくれる人がいるわけではありません。したがって、自分自身でわからないことを勉強したり調べたりしながら自己流で仕事をこなしてきたわけです。
自分個人としてはそれでよかったのですが、一方で抱えていた不安は、「はたしてこのやり方は一般的なのか」ということと、「他社やほかの事例でも通用するのか」といったものでした。
そしてそれゆえに、簡単な表現でもって他者に自分がやってきたことを伝えることへの不安も持ち合わせていたのです。
なぜかというと、自分自身の経験からくる具体的事例は持っているものの、「全体感や一般論が不在」なゆえに、相対感をもって相手に伝えることができないと思ったからです。全体感を持ち合わせていないと、自分の経験を咀嚼(そしゃく)したことにはなりませんし、咀嚼できないと簡単な表現でもって他者に伝えることはできません。簡単な表現でもって伝えることができないと、人は話を聞いてはくれません。
したがって、私は自分自身の中できちんと経験を咀嚼し、もって他者へも伝えられるようになるために、「知識と経験の棚卸」と発展を図るべく、一般論やほかの事例を知り、自分の経験と結び付けるべく海外のビジネススクールへ行き、その後、戦略コンサルに入ったわけです。
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