「大人の脳は成長しない」という大きな誤解

「勉強ができないのは遺伝のせい」もウソ

特に、私は認知症を専門のひとつとしており、その人の体質と生活習慣が、認知症に与える影響を明らかにしています。この中で、老化が脳に及ぼす影響や、生活習慣が脳に及ぼす影響が見えてきたのです。

この記事では、こうした経験からわかってきた、意外に知られていない脳の性質についてご紹介したいと思います。

「海馬」はいつも新しい細胞を生み出している

1)脳はいつまでも成長し続ける

大人になってから勉強をしても、もう脳の発達は止まっているし、無駄なのではないか。そう考えたことのある人もいるかもしれませんが、実はそんなことはありません。

脳のあらゆる細胞は、年齢に応じて右肩下がりで減っていきます。しかし、いつも新しい細胞を生み出している場所があります。それが「海馬」です。海馬は首の裏側あたりの、ちょっと奥まったところにある小指ほどの大きさの器官です。私たちの記憶を担当しています。

従来、脳細胞は、生まれたときをピークに減り続けていくと考えられていたのですが、最新の脳医学研究から、 「海馬だけは、脳細胞を新しく生み出している」ということがわかりました。大人であっても、脳(海馬)の細胞は日々、新生されているのです。ですから私たち大人に求められる脳との「付き合い方」は、今ある脳の老化を防ぎ、成長を促すことだとわかります。

私たちも海馬についての調査を行っています。

たとえば子どもと睡眠に関する調査では、睡眠不足はそれだけで、子どもの海馬を萎縮させることが明らかとなりました。

また、690人の男性と、738人の女性を対象とした調査では、「男性の肥満が海馬の体積に悪影響を与えている」ということがわかりました(女性の肥満においては、そこまでの関連性は読み取ることができませんでした)。男性の皆さんは「太ると脳に悪い」ということを覚えておきましょう。

2)「勉強好き」な人の脳は老化しにくい

勉強好きな人の脳は、なかなか老けることがありません。

約400人を対象に8年間にわたって行った私たちの調査では、「知的好奇心」の高い人ほど、認知機能を担当する「側頭頭頂部」の萎縮が少ないことがわかっています。「知的好奇心」とは、知りたい、学びたい、達成したいといった気持ちのことです。勉強、仕事、ボランティア、趣味などにイキイキと取り組んでいる人ほど、脳は若く保たれていたのです。「脳」への栄養は、知的好奇心なのです。

大人になってから意識をしたいのが、「前頭前野」です。前頭前野の発達は遅く、10代から20代にかけて成長を続けます。ここは、「高次認知機能」を担当する場所です。つまり一言で言えば「人間らしくイキイキと生きるための能力」です。

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