「大人の脳は成長しない」という大きな誤解 「勉強ができないのは遺伝のせい」もウソ

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しかし、残念ながら壊れるのもいちばん最初(認知症は前頭前野がダメージを受けた状態です)。「知的好奇心」は、前頭前野の刺激になりますから、脳のパフォーマンスを保つためにも、自分がしたいと思える勉強に熱心に取り組むことは大きなプラスとなります。

3)遺伝より環境によって変わる面が大きい

よく「自分が勉強ができないのは遺伝」などと言うことがありますが、実は遺伝より環境の影響のほうが大きいということはご存じでしょうか。これは「双子研究」から明らかです。

「一卵性双生児」は1つの受精卵が初期の細胞分裂をする際に2つに分かれるため、遺伝的形質が同じです。そのため、一卵性双生児を追跡調査することで、遺伝と環境が脳に与える影響を判断することができるのです。

このような研究からわかってきたことは、遺伝の影響を受けやすいのは、「感覚に近い部分」です。視覚、聴覚、触覚、運動能力など子どもの頃に発達する部分が受ける遺伝的な影響は、8割から9割となります。

一方、10代から成長する「前頭前野」は違います。こちらは遺伝の影響は5割から6割。つまり、考えたり、計画したり、コミュニケーションをとったりする、自己実現をかなえるための力というのは、遺伝の影響が少ない脳の部分なのです。

このような事実を知っていると、親の学力が低いから自分もダメだとか、自分の学力が低いから、子どももダメだ、といったことで、悩む必要がないことがわかります。もちろん逆も真なりで、親が高学歴だからといって、自分(や子ども)が同じように学力が高いという保証はありません。

文系脳と理系脳

4)文系も理系も、脳のつくりには関係ない

『「脳を本気」にさせる究極の勉強法』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

文系脳、理系脳、といわれることがあります。でもこの言い方は必ずしも正しくありません。

私たちの中には、コミュニケーション上手でバランスを重視することができる「バランス脳」の持ち主と、論理的思考能力が高く、ひとつのことにこだわりを見せる「こだわり脳」の持ち主がいます。前者には女性が多く、後者には男性が多い傾向がありますが、あなたが男性か女性かで、どちらかの脳に決まるわけではありません。男性でも「バランス脳」を、女性でも「こだわり脳」を持っている人はもちろんいます。

つまり、男性だから、女性だから脳の構造が違うということはありません。ですから、娘は文系に、息子は理系へなどと短絡的に考えてはいけません。なぜなら理系、文系の得意不得意は、必ずしも性差で決まるものではないからです。

あなた自身の脳も、どちらに区分されているかはわからないのです。「超理系」の作家や、「超文系」の科学者もいます。男性だから、女性だから、理系だから、文系だからと、決めつける必要はまったくないのです。


(構成:黒坂真由子)

瀧 靖之 東北大学加齢医学研究所教授、医師、医学博士

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たき やすゆき / Yasuyuki Taki

東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳MRIはこれまでに16万人に上る。著書『生涯健康脳』(ソレイユ出版)、それを子育てに応用した『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える「賢い子」に育てる究極のコツ』は、それぞれ10万部を突破するベストセラーとなっている。

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