ウォンテッドリーの「批判記事排除」は問題だ ネットでは「もみ消し」などできないのに…

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DMCAの手続きは、検索エンジンを中心としたネット社会に必要不可欠なものだが、一方で都合の悪い情報を消す口実……抜け穴として利用されてきたのである。実はDYMはそうした検索除外申請を含むサービスを、SEOやネット状のレピュテーションコントロールサービスとして提供していた企業でもあり、自らの悪評を消すためにDMCAルールを濫用し、結果として悪評を高めることになった。

こうしたDMCAルール濫用にまつわる批判・騒動の記憶がまだ新しい中、ウォンテッドリーはどのような理由で、DMCAルールを用いた検索除外申請を行ったのだろうか。

ウォンテッドリーがアクセス制限を申請したページは、INSTというベンチャー企業の社長が書くブログの特定エントリーだ(https://blog.inst-inc.com/wantedlyipo/)。このページでは、ウォンテッドリーの株式公開に対して批判的な内容が記されている。

ウォンテッドリーは、この中で創業者であり代表取締役社長でもある仲暁子氏の画像が、許諾なしに使われているとしてグーグルに対して検索除外の申請を行うとともに、同ページにリンクを張っているツイートに関してもTwitter社に除外申請を行った。該当ページだけではなく、該当ページにリンクしているツイートまで除外したため、あっという間に”ウォンテッドリーがDMCAで特定記事の発見を困難にしようとしているのでは?”という噂が広まった。

なお現在、該当ページからは仲暁子氏の画像は削除されており、著作権違反の状態ではない。よって本記事に関してDMCAルールに基づく検索除外の申請は行われない(はず)だ。

仲氏「全ての記事を追えているわけではない」

問題はウォンテッドリーが、なぜDMCAルールを用いて該当ページを(検索エンジン上で)消しにかかったか、である。同社は8月25日に「当社が行った著作権侵害による削除申請につきまして」とするニュースリリースを出し「一部ブログ記事で利用されていた画像に関しまして、有識者に意見をいただきながら社内で協議した結果、当社が著作権を有する画像の無断使用はやめていただきたいとの判断に至りました」とコメントしている。

法的判断は微妙になるかもしれないが、株式公開を予定する企業についての記事を書く場合、その企業の創業者の画像をリンクするのは不自然なことではない。なぜ、批判的な記事を書いたこのブログ記事だけを対象としているのかという当然な疑問が残る。

この件に関して仲氏にコメントを求めたところ、広報コメントを引用した上で「当社も全ての記事を追えているわけではなく、当該記事が公開された当初話題となっており、弊社で記事を確認したことで、画像の件が発覚したため対応を検討するに至りました」との返答をもらった。

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