ウォンテッドリーの「批判記事排除」は問題だ ネットでは「もみ消し」などできないのに…
しかしながら、ウォンテッドリーがDMCAルールに基づく検索除外申請を行うのは本件が初めて。しかも、該当ページからは引用画像は速やかに削除されており、ブログ筆者に連絡をすれば、すぐに画像を削除しただろう事は想像に難くない。
となると、「画像の無断使用があったから」という削除申請理由は、とってつけた口実と考えるのが自然だ。
ブログには数々のまっとうな疑問が書かれている
該当ページでは、ウォンテッドリー幹部がほとんど株を割り当てられておらず「やりがい搾取感が否めない」と指摘するなど私的な感想や、感情的に煽る表現なども書かれてはいるものの、投資家ならば疑問に思うだろうポイントもいくつか指摘している。
たとえば、2年前に行われた前回の投資ラウンドでは、投資前価値を90億円とバリュエーションして投資家を公募しているにも関わらず、今回の東証マザーズへの上場では40億円と半分以下の評価しての売り出し。つまり2年前に支援していた投資家よりも、安く買えることになり、公募価格より安く株を調達した一部株主しか旨味を得られないダウンラウンドになっている。
さらに調達資金の使途に関しても、事業拡大に伴うオフィスフロア増床と内装工事に割り当てるとしており、その金額は約4000万円。人材確保の費用などは調達を見込んでおらず、調達した資金を投じてどのように事業を前進させていくのか不明瞭な点も気になるところだ。ウォンテッドリーが、このタイミングで株式公開を行う理由が見えてこない。
こうした部分は、東証マザーズへの上場申請が通った時から、投資家の間では話題になっていた話で、上場するベンチャーに注目している投資家や企業家、ビジネスパースンならば把握していた人も多い。もしウォンテッドリーが検索除外申請を行わなければ、このブログはごく一部の人たちの間で話題になっただけで終わっていただろう。
前述したDYMのタイ乱痴気騒ぎ事件も、そのまま沈静化するまで待っていれば、そのうち風化していったに違いない。しかし、情報をもみ消そうとした(あくまで検索結果から除外されたり、該当リンクが張られているツイートへのアクセスができないだけで、ページそのものは存在している)ことで、かえって衆目を多く集めて炎上へとつながった。今回の炎上案件も、ウォンテッドリーが自ら招いた結果と言わざるを得ない。
ウォンテッドリーのDMCAルールを用いた検索除外そのものについて、筆者は批判的な感想を持っている。彼らが批判内容に対して真摯に応じるメッセージを出せていれば、そもそも検索除外を申請する必要はなく、創業者の写真が引用されたからといってダメージなどないからだ。
ただし、誰もが同じように思うわけではない。たとえば経済ニュースのキュレーションサイトとして知られる「NewsPicks」では彼女を擁護する声、INST社長のブログエントリーを批判する声が少なくなかった。どんな意見に対しても、ポジティブ、ネガティブ、両面での反応があるものだ。
とはいえ言論の自由が保障された日本において、INST社長が書くブログのエントリーは、常識的な範囲の表現だ。ウォンテッドリー自身はあくまで画像著作権についての申請であり、評判を傷つける特定記事の表出を避ける目的ではないことを示唆している。しかし、彼らの真意がどこにあるにせよ、結果を見ればわかるとおり、かえって評判を落としている点に注意が必要だ。
インターネットのコミュニティにおいては、都合の悪い情報を見えないように操作したところで、ちょっとしたことで一気にその事実が広まってしまう。現実社会ならばできたもみ消しも、インターネットの伝搬速度の中では通用しない。そのことを如実に表した事例と言えるだろう。
上場前というセンシティブなタイミングということもあるだろうが、それゆえに今回、ウォンテッドリーは真正面から受け止めるか、あるいは受け流すべきだった。当然、誰もが疑問に思うことに関して反論があるのであれば、幹事証券会社などと相談をしながら、きちんと説明すればよかったのである。
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