誰しも共感できる話で盛り上がる「あるあるネタ」は、テッパンの雑談ネタだ。もちろん世代が違うから、上司たちも「野球漫画といえば『キャプテン』だよね」とか、「谷口より丸井が好きでしたねえ」みたいな、ノスタルジックなネタで共感してもらえるとは考えていない。
しかし、これまでなら「それ、よくありますねえ」と世代を超えても共感できたネタまでもが、若手世代に通じず、戸惑っている先輩が多い。
「『使った食器や洗濯物がたまってない?』とか『カレーつくると1週間以上、カレー味のメニューが続くよね』とか、若い人たちに“一人暮らしあるある話”を振ったら、ほとんどが親元で暮らしていた。そのうえ1人は『あ、僕、シェアハウスなんで……』と軽くマウンティングされた気すらした……」(45歳・マスコミ業界勤務)。
「『俺は酒の席でこんな失敗をしたんだよ。みんなはない?』と水を向けても『僕、飲まないんですよ』『お酒弱いんで』とまったく盛り上がらない。ようするに“若い頃って、こんなものだよね“という話がどうも自分たちと違うようです」(43歳・商社)。
あるあるネタが“ズレ”る理由の1つは、経済的理由などを背景にした、若手世代と上司世代の価値観の違いだという。
「一人暮らし」「お酒の失敗」話が通じない根本原因
そもそも今の上司世代が生まれたのは1970年前後。幼少時から大学生くらいまでの多感な頃は、日本経済が元気だった時代でもあった。経済的に余裕がある家庭は、地方からでも大学にどんどん行かせた。また、若いうちから自立したいと考える人も多く、一人暮らしで社会人生活をスタートさせる人間も多かったし、社会全体が右肩上がりで裕福になっていく中、今後の生活に不安を感じる人は少なかった。
しかし、今の若手世代は、生まれたのが1990年代以降。すでに景気が低迷し、デフレ経済となっていく状況で、バブル景気のような「空前の好景気」を、まったく知らずに過ごしてきた。若手世代の親たちも景気低迷の影響を受け、家計が逼迫している家も多い。先行きの不透明さから、倹約志向で、ムダな消費を控える傾向も続いている。
「だから若手世代は、一人暮らしをしたくてもせずに自宅に住み続けている人がとても多い。シェアハウスやルームシェアだって“流行り“というより経済的な理由が大きいはず。お酒を飲まないのも、ムダにお金を使いたくないという意識もあるでしょう。この土台が違うから、『一人暮らしってこうだよねえ』とか『お酒の失敗を笑い飛ばす』といった話題がかみ合わないわけですよ」(原田さん)。
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