夏休みのキラキラSNS投稿に苛つく人の心理 あまり心乱されるなら、離れることも考えよ

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人は、自分の欲求と現実がそぐわない時に、自己嫌悪に陥り、他人に対して怒りや葛藤を感じやすくなります。したがって、欲しいブランドのバッグが経済的な問題で買えないでいるときに、「これ、買っちゃいました!」と高価なバッグが写った写真が投稿されていれば、気持ちはモヤモヤします。

このモヤモヤが深刻化すると、憂さ晴らしのために、虚偽投稿をしてしまう場合もあります。持っていないもの、行っていないお店、食べていないものに関する投稿を、さも現実にしたかのようにアップしてしまうのです。「まさかそこまで……」と思う人がいるかもしれませんが、世の中にはSNS用投稿用のレンタル友人を提供するサービスがあり、一定のニーズがあることが窺えます。

それでは、こうした負の感情は、どうやって解消していけばいいのでしょうか。

怒りをつくり出すもとになる気持ちは、悲しみです。自分が満たされない、受け入れられない悲しみは、やがて怒りに姿を変えていきます。したがって、SNS以外できちんと承認欲求を満たせる機会があればよいのですが、難しいのが現実です。

本当に大切なことはSNSに載っていない

そこで、視点を少し変えてみてください。

大家族で、自分の作った料理をみんなが「美味しい」と言って食べてくれれば、そこで承認欲求は満たされます。常にSNSに投稿する必要はありません。また、身近な人(夫や妻)がきちんと認めてくれていれば、「子育てを頑張っている私」をアピールする必要はありませんし、本当に儲かっている人は、SNS上で「稼いでいる」なんて言わないでしょう。そう考えると、こうした承認欲求の隠れている記事を見て、羨望するなんておかしいと思いませんか?

先日、SNSに凄くおしゃれなレストランでの食事を載せていた友人がいました。後日、「デート?」と聞いてみたところ、「デートだったら載せるわけない」と笑われました。すなわち、本当に特別なことは誰にも言いたくないので、SNSには載せない、あるいはそうとは直接わからないように一部を隠して載せるわけです。

SNS投稿の中心となるのは、人々の生活の中の「ちょっと幸せ」か「ちょっと不幸なこと」です。要するに、取るに足らないことが選別されて投稿されています。だとしたら、その投稿がその人の生活のすべてのように思い込み、一喜一憂する必要はないのです。

また、特定の誰かに見せたい投稿をしている人も多いのではないかと思います。不特定多数の人ではなく、自分とつながって欲しい「誰か」を意識して投稿するのは、ある意味健全な使い方かもしれません。

振られた相手に、モテている自分をアピールしたいとか、いつも自分の自慢話ばっかりする職場の先輩に、直接は言えないので「あなたよりも充実した生活送っています」と間接的に伝えるとか、振り向いてほしい相手に「私ってこんなに素敵な人なんです、親しみやすいひとなんです」と安心感を抱かせるとか、もしくは、ビジネスで「こんなにすごい私」というカリスマ性を感じてもらうということが目的という場合もあるでしょう。

直接言えない相手に自然にアピールすることが可能になるという点においては、自分の気持ちの投影になると思うので、その使い方はありだと思います。この場合は「相手」ありきの投稿になるわけで、「自分の本来の姿」ではなく「特定の相手にどう思われたいか」という意識が強くなり、必然的に「演じる」ことになります。こうした「特定の誰か宛」に「つくられた」記事に、他の誰かが必要以上に反応するのはある意味滑稽です。

こうして考えていくと、SNSに振り回されることが、いかに無意味なことか、お分かりいただけるのではないでしょうか。

SNSは本来、他人と繋がることを楽しむツールです。「へぇ、こんなところがあるんだ、行ってみたいな」「ふうん、そういう考え方をするんだ、なるほど(もしくは、私とは違うな)」と、価値観の多様性を認め、距離を置いて楽しめるなら、大いに活用して良いと思います。

ただ、必要以上に気持ちを乱されるようなら、SNSとの付き合い方を見直す必要があるかと思います。必要なことを必要な人に伝えたいときには、パーソナルな伝達手段があるのですから、場合によっては手放すことも考えましょう。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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