東芝、「限定付適正」でも危機状態は変わらず メモリ売却は難航、事態打開に奇策を検討か

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8月10日、記者会見に臨む東芝の綱川智社長。2017年3月期の有価証券報告書は監査法人から一応のお墨付きを得た(撮影:尾形文繁)

 何とも不思議な決着だった。

 東芝は8月10日、遅れていた2017年3月期の有価証券報告書を提出した。米国での原子力関連の巨額損失の計上時期をめぐる監査法人との対立から、本来の期限である6月末に提出できなかったものだ。

2017年3月期の最終損失は9656億円、3月末時点の債務超過額は5529億円になった。2018年3月末までに債務超過を解消できなければ上場廃止となる。

監査法人の不信感は大きかった

 注目されてきたPwCあらた監査法人の判断は、決算についておおむね妥当とする「限定付適正」だった。

「不適正」だった場合、東京証券取引所の上場廃止規定に抵触する(これには「直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき」というただし書きが付く)。東芝は、過去の有価証券報告書の虚偽記載により、内部管理に不備がある「特設注意市場銘柄」に指定されており、この解除(か上場廃止)の審査中。その審査に大きなマイナスとなる「不適正」を免れたことは、東芝にとって大きな意味がある。

もっとも、これで特設注意の指定解除に前進したというのは言い過ぎだ。PwCは「2016年3月期は米国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠していない」と厳しく指摘。「(工事損失引当金について)6522億円のうち相当程度ないしすべての金額は、前連結会計年度(2016年3月期)に計上されるべき」「質的・量的に重要」と強調する。

それでも「限定付適正」なのは、見解の相違が損失計上時期という一点のみに限られるから、というロジックだ。上場廃止に引き金を引くことを何とか回避しようとした苦労が窺える。

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