東芝総会、株主に広がる「疲れ」と「あきらめ」 原子力の前責任者は最後まで語らなかった
危機的な経営状況にもかかわらず、妙に穏やかな株主総会だった。
「おはようございます。私が社長の綱川でございます」
6月28日、千葉県の幕張メッセで開かれた東芝の第178期定時株主総会は、綱川智社長のこんなあいさつから始まった。そして綱川社長は「まずはお詫びを申し上げたく思います」と切り出した。
総会で決算の報告ができないこと。法律で6月末までとされている有価証券報告書の提出を延期すること。未監査の暫定値ながら、3月末に5816億円の債務超過に転落したことで8月に東証2部へ指定替えが決まっていることなどを改めて説明。壇上の役員全員が起立して、4秒弱頭を下げた。
「経営者から直接説明を聞きたい」
総会が始まる前、10人の株主に話を聞いた。
「憤りを感じる」(70代男性)と経営陣に対する怒りの声もあったが、「どうしようもない」(70代男性)、「上場廃止も想定している。こうなったら仕方ない」(60代男性)と“あきらめ”を語る株主が多かった。
そうした中でもっとも多かったのは、「どんな状況なのか知りたい」(61歳男性)、「新聞などにいろいろな情報が出ているが、何が本当かわからない。経営者から直接説明を聞きたい」(48歳女性)というもの。
しかし、経営陣がそうした株主の気持ちにどこまで応える気持ちがあったのか疑問が残る。
「原則として1人1問、2分以内でお願いします」株主からの質疑応答の入る前に綱川社長はこう釘を刺した。ただ、株主に対する説明に誠実さが感じられないのは、質問制限があったからだけではない。
「今、東芝は非常事態。現場に立脚した強力なリーダーシップが必要だ。現場の求心力を高めるために何をやっているのか」
回答者こそ指名していないが、明らかに綱川社長に向けられた質問に答えたのは、人事担当の牛尾文昭代表執行役専務だった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら