東芝再生を遠ざける「政府主導」の日米韓連合 運営パートナーのWDは憤りを隠さない
「優先交渉先となっただけで、最後の最後までわからない」
東芝は6月21日、半導体メモリ子会社の売却について、官民ファンドの産業革新機構、米投資ファンドのベインキャピタルなどによるコンソーシアムを優先交渉先と決めた。半導体大手、韓国のSKハイニックスも融資で参加する「日米韓連合」である。
28日までに最終合意へ
原子力事業の巨額損失により、2017年3月期に約5816億円の債務超過に陥った東芝は、その解消のためメモリ事業の売却を急いできた。今回の決定で28日の株主総会までの最終合意、2018年3月末までの売却完了を目指す。
ただ、冒頭の発言はコンソーシアム関係者のもの。その言葉どおり、これで一安心とはいきそうにない。
第1の障害は、メモリ工場を共同運営する米ウエスタンデジタル(WD)の存在だ。WDは自社の同意なしに東芝が合弁持ち分を売却することを「契約違反」と反対。5月14日には国際仲裁裁判所に、6月14日にはカリフォルニア州上級裁判所に売却の差し止めを申し立てた。優先交渉先決定に対しても「自社の権利を主張し続ける」と強硬姿勢を崩していない。
「革新機構の背後にいる日本政府にはWDもけんかを売りにくいだろう」(主要銀行幹部)と期待する声もあるが、WDがライバルであるハイニックスを含む買収スキームを認めて、訴訟を取り下げる可能性は低い。革新機構関係者も「WDとの係争が片付かなければ難しい」と率直に語る。
独占禁止法というハードルもある。フラッシュメモリ5位で約10%のシェアを持つハイニックスが、出資ではなく融資で参加することで独禁リスクの回避を狙うが、特に中国当局がどういう判断を下すかは不明だ。
「6月28日までに契約したい」。23日、有価証券報告書の提出期限の延長申請承認に関する記者会見で東芝の綱川智社長はこう述べた。間に合ったとしても、諸問題が解決されるという条件での契約になる。
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