東芝再生を遠ざける「政府主導」の日米韓連合 運営パートナーのWDは憤りを隠さない

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「(米投資ファンドの)コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が合流する可能性も残っている。WDが連合に入るかもしれない。どんでん返しもありうる」と前出の主要銀行幹部は解説する。

これまでも東芝のメモリ事業売却は迷走が続いた。

最終審査となる2次入札締め切りの5月19日、正式提案ができたのは、半導体大手の米ブロードコム(以下BC)とIT業界に強い投資ファンドの米シルバーレイクの連合だけだった。

国の意向を忖度(そんたく)

BC陣営の提示額は2.2兆円。買収完了までメモリ事業の設備投資3000億円に対する保証や、WDとの係争を東芝だけに任せない姿勢も示していた。

2兆円超とされた台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は資金計画の具体性に欠け、ベイン・ハイニックスは独禁法の懸念から有力視されていなかった。KKRは金額提示ができず、革新機構は2次入札に参加さえしていない。

日米韓連合の提示額は約2兆円。日本勢が過半を出資する。BC陣営を下回る価格の相手に決めたのは、BCに対するWDの反発の強さや、一部で「BCによる買収後のリストラ懸念」があったことがある。そして何より大きかったのは、東芝が国の意向を“忖度”したからだ。

世耕弘成経済産業相や菅義偉官房長官が、情報セキュリティや技術流出、雇用などの観点から東芝の半導体事業の重要性をたびたび強調、経産省は日本勢が主導する買収の実現に動いた。

当初、革新機構と日本企業による日の丸連合作りを画策したが、「株主への説明がつかない」(財界幹部)と進展しなかった。その後は革新機構を軸に日本勢が過半出資する形で、外資との連携を模索してきた。

革新機構がBC陣営に合流する構想もあったが、どちらが過半を出資するかで溝が埋まらなかった。革新機構とKKRの日米連合も長く検討されたが、企業価値評価で折り合えなかった。経産省幹部が渡米し、日米連合への少数出資での参加をWDに求めたこともある。こうした経緯を経て、6月に入り急浮上したのが、革新機構とベイン・ハイニックスとの共闘だった。

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