私たちは自分のおカネが目減りすることを恐れている。そのため、タダで物やサービスが手に入ると聞くと、つい試してみたくなる。
2009年に日本でも出版されベストセラーになった『フリー <無料>からお金を生み出す新戦略』(クリス・アンダーソン著)では、さまざまな無料のスタイルと、それが生み出す経済モデルについて述べられているが、つまるところ、無料は“最大の集客装置”ということだ。
どうしてわれわれはこんなに“無料”が好きなのか。この本の中でも引用されている行動経済学者、ダン・アリエリーの弁によると「値段ゼロは単なる価格ではない。ゼロは感情のホットボタン、つまり引き金であり、不合理な興奮の源」(著書『予想通りに不合理』より)だという。
その理由は、「たいていの商取引にはよい面と悪い面があるが、何かが無料!になると、私たちは悪い面を忘れ去り、無料!であることに感動して、提供されているものを実際よりずっと価値があるものと思ってしまう」「それは人間が失うことを本質的に恐れるからではないかと思う。無料!のほんとうの魅力は、怖れと結びついている。無料!のものを選べば、目に見えて何かを失う心配はない(なにしろ無料なのだ)」(同書より)。
簡単に言えば、「おカネを払わない以上、損はしないはずだ」と考える心理だ。しかし、『フリー』なる本が話題になったことが示すように、おカネを払わないどころか、「無料」の先には広大な市場が手を広げて私たちを待ち構えているのが現実だ。
筆者はなるべく賢明な消費者でありたい。そこで、この無料経済のトラップに引っ掛からないための、「よい無料・悪い無料」の違いを考えてみた。
悪い無料の多くは、一見親切で飛びつきたくなる
筆者は、よい無料、それはうっかりおカネを使ってしまう落とし穴がない、もしくはその可能性が相当低い無料だと考える。まずはその逆、引っ掛かってはいけない悪い無料について、3つにまとめてみた。
1 入り口無料
2 動機無料
3 条件つき無料
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