最後に「広報的無料」だ。これは、企業や団体が自社の技術や製品をアピールするため、宣伝費をかけ無料にしているパターン。新製品のサンプルを配ったり、PRイベントに招待するなどがそれにあたる。ショールームや工場見学を無料で公開するという例もある。特に飲食系の工場見学は根強い人気を博し、ビールメーカーの工場見学では出来たてを試飲できるため何度も通う常連さんもいるという。
この「広報的無料」はもっとうまく使いこなしてもいいかもしれない。せっかくの夏休み時期なので、予約不要で利用できる東京の「無料スポット」も紹介しておこう。
「広報的無料」を使い倒す
公的な施設でいえば、「ポリスミュージアム(警察博物館)」(中央区京橋)。2017年4月にリニューアルオープンしたという同館をのぞいてみたが、平日にもかかわらず子ども連れや外国人でにぎわっていた。6階まである館内は、「警視庁の活動について紹介する、見て、学び、体験できる博物館」だそうだが、交番や指紋採取の疑似体験、110番疑似体験などのほか、子どもは警察官の制服(サイズ100、120、140)を借りて白バイなどに乗って記念撮影ができる。体験型コンテンツが充実していて、筆者も家の防犯チェックコーナーにチャレンジしたが、点数制で結果が出るので親子でやってみると楽しく学べるのではないだろうか。
警察とくれば次は消防だが、新宿区四谷三丁目には「消防博物館」(東京消防庁 消防防災資料センター)がある。こちらも江戸の火消しから始まる消防の歴史を学べるほか、大正から平成までに活躍した消防自動車8台を展示してある。警察も消防も子どもが興味を持つ分野でもあるので、宿題の絵日記や自由研究のネタ探しに役立つのではないかと感じた。
また、全面無料ではないが、東京都立動物園である上野動物園は都内在住・在学の中学生は無料なので、小・中学生を持つ東京都在住の家族なら大人分だけでOK。さらに、老人週間(9月15~21日)期間中は60歳以上の方と、その付添者(1名)は無料になるため、小・中学生の孫が祖父母と遊びに行く場合、条件に合致すれば全員無料も不可能ではない。
先ほどの工場見学のほか、レジャーや学びに使える無料の企業施設もある。アミューズメント色が強いのは東京お台場にあるトヨタの体験型ショールーム「メガウェブ」だ。単なる車の展示だけではなく、人気ゲーム「グランツーリスモ6(GT6)」を体感できるモーター・スポーツ・シミュレーターや、人の動きを感じて動く次世代型パーソナルモビリティ「Winglet」の試乗などのプログラムが無料で楽しめる。もちろん、トヨタ車の試乗ができる専用コースも人気で、高級車クラウンマジェスタにも乗れる(試乗体験には300円かかる)。
もし、話題のAIやIoTといった先端技術に興味があるなら、「TEPIA先端技術館」(港区北青山)をのぞくのもいい。さまざまな分野の先端技術を集め、間近で体感できる展示施設で、協力企業が提供する最新技術を見たりコミュニケーション型ロボットとのふれあい体験ができる。先の「ポリスミュージアム」は小学校低学年の親子で行って楽しめる施設だが、こちらは中学生以上のほうがいいかもしれない。「高齢化社会」「地域間格差」を先端技術でどう解決するかといった硬派な展示も見応えがある(展示内容は変更になる可能性あり)。
東京の話ばかりで恐縮だが、無料ついでに協賛企業の無料巡回バスも便利だ。アクアシティお台場やビーナスフォートなどを巡回する「東京ベイシャトル」、八重洲から日本橋、京橋などを回る「メトロリンク日本橋」、大手町から日比谷・有楽町を巡回する「丸の内シャトル」がそれで、レジャーやビジネスの足に活用したい。こうした無料は、安心して利用していいだろう。
冒頭に書いたクリス・アンダーソンの『フリー』では、無料を支える多くの有料の仕組みが語られる。われわれが全面的にそれに抗うのはもはや難しいだろう。よい悪いももちろんだが、自身でその良しあしを見極めたうえで、納得できる無料を選択したいものだ。
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