「4代目ロードスター」をつくった男の頭の中 目指したのは運転が知らずにうまくなる車だ
「ライトウェイト・スポーツカーって、ある意味、絶滅するべく運命づけられていると思っています」
――とは?
「最初に出して、それに対する意見を採り入れていくと、次のモデルは必ず大きく、重たくなります。幌は電動にとか、エンジン排気量はもっと大きくとか、ゴルフバッグを2つ積めるトランクとか。で、ライトウェイト・スポーツとしては死ぬ方向」
――なるほど。
「ロードスターの場合は、そういう不幸な道をたどらずに代を重ねてきました。周囲の予想を、いい意味で裏切りつづけてきたというか」
――はい。
「それができたのは、初代のNAがあのようなクルマだったからです」
――アツいファンがたくさんいます。
「おかげさまで、累計100万台超。とはいえ、ライトウェイト・スポーツカーとしては先代のNCあたりが限界だったのではないかな、と」
――で、今回、原点回帰というか。
「初代がでてから25年経って、NAを復活させる。会社としては、勇気ある決断だったと思います」
――なにやら他人事のような(笑)。
「初代は平井敏彦さんが開発主査をつとめたわけですが、あのときは、当時の山本健一社長以下、経営陣がゴーをだしてくれたからロードスターというクルマが世にでることができました。たとえ上手くいったとしても大して儲けにはならないプロジェクトだけれど、マツダとしてやるべきだ─ということで」
――はい。
「ではNDのときはどうだったかというと、25年経って、やはり同じような状況でした。カネ勘定は俺たちがやるからお前たちはピュアにやれ、と。そういってくれた人が経営陣のなかに何人かいまして、おかげで我々兵隊は心おきなく……」
――おー。
守るために変える
「ファンの皆さんだけでなく、我々にとってもNAは教祖、御本尊みたいな存在です。でも、じゃあその御本尊を見ながら新型を作ればいいかというと……」
――違いますか。
「まさに昨日、ロードスターの4時間耐久レースにドライバーとして出場したんですが、サーキットを走っていて、目の前のクルマだけをジッと見ていてはダメですよね。直前のクルマを視界にとらえながらも、コーナーのずっと先を見ていないと」