マツダがシェア2%でも存在感を放つ理由 台数や売上高を最重視しないから復活できた

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1150台ものマツダ(ユーノス)ロードスターが集結したイベントの狙いとは?(写真は2014年、マツダ提供)
「顧客が大事」「顧客視点で考えろ」と口にする経営者は多いものの、実際に冷静に顧客視点で考えると、過去の惰性で企業視点の取り組みを続けている会社は意外に多いのではないでしょうか。
『顧客視点の企業戦略』の著者であり、アジャイルメディア・ネットワークで企業のアンバサダープログラムやソーシャルメディア活用のアドバイスを行う徳力基彦氏は、「ソーシャルメディア時代に成功している企業に共通しているのは顧客視点での取り組みができている」と指摘します。

長期にわたる低迷から復活したマツダ

「マクドナルドの復活で見落とされがちな本質」(3月29日配信)に続き、今回は自動車業界での復活劇をご紹介しましょう。

危機に対して短期間でV字回復した成功事例の代表がマクドナルドであるとすると、長期にわたる低迷からの復活劇の代表事例にはやはりマツダが挙げられます。

マツダというと、ここ数年は売り上げ、営業利益ともに右肩上がり、足元の昨年度の業績こそ踊り場に行き着いて苦しんでいる面もあるようですが、昨年はマーケティング大賞も受賞したぐらいですから、模範的な優良企業のイメージを持っている読者も多いかもしれません。

しかし、マツダはつい20年前には倒産が現実味を持って語られる会社でした。バブル末期にトヨタを追いかける姿勢で実施された販売店の5チャネル化が、バブル崩壊の影響もあり大失敗。1996年にはフォードからの出資比率を33.4%引き上げる形で、社長もフォードから受け入れ、文字どおりフォードに救済されます。

しかも、これですぐに復活を遂げたわけではなく、一時は黒字化したものの、2001年には過去10年で最悪の決算に。ようやく長いトンネルを抜けて安定して黒字化したと受け止められたのは2002年のことです。

さらに、これで危機は去ったかと思いきや、実はリーマンショックや円高などの影響で2009年にも再び赤字に。東日本大震災やタイの水害の影響も受ける結果となり、4年連続の赤字を計上してしまっているのです。

バブル後の1990年ごろから、実に20年以上もマツダは再生のための試行錯誤を続けていたことになります。そんな中で策定されたのが2012年2月に発表された「構造改革プラン」でした。

この「構造改革プラン」では、SKYACTIVへの注力や、大幅値引きに頼らない正価販売やグローバルの生産体制強化などの4つの柱が掲げられ、それを軸に全社で構造改革を進めることで、マツダは見事に赤字体質から黒字転換に成功することになります。

「SKYACTIV(スカイアクティブ)とはエンジン、トランスミッション、プラットフォーム(車台)などクルマの基本性能であるベース技術をゼロから見直して革新するというコンセプトです。

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