たとえばジョーは、休みの3~4カ月前からバカンスの日程を決めるという。妻子持ちだから、今年は家族とどの島にいくのかなど、具体的計画をたてる。そのうえで、社内外に「公開と宣言」をするのだ。上司や同僚に「この期間は休みます」と伝え、スケジュールシステムでも共有。社外にもすぐ伝える。取引先の日本企業にまで、「私は8月休むので、案件は7月末までで」と春先に言ってくる。
そこまで決めて「発信」するので、既成事実が出来上がる。あとは休みまでに、いかに仕事を片付けるかに全力集中する。決して無責任に仕事を放棄してはいない。本気で宣言して、本人がいない間も、会社の仕事がまわるよう、準備して休むのだ。
リクルート出身者に、成功者が多いのも同じ理由
実際には、欧米の休暇のスタンダードを日本で実践するにはまだハードルが高い。だが、「決断」「公開&宣言」「実行」という一連の動作は、ビジネスの決断にも完全に当てはまる。しかも、成功の可能性が飛躍的に高まるのだ。
この一連のプロセスを会社丸ごと実践している大企業がある。今年亡くなった江副浩正氏が創業者の、リクルートだ。江副氏の評価は分かれるが、かつて同社の社訓でもあった彼の金言の一つに、「自ら機会を創りだし、機会によって、自らを変えよ」というものがある。
今のリクルートと当時の同社は全く同じではない。だが、少なくとも同社は中小企業だった頃から、「全社員対象の新規事業提案コンテスト」や、「異動希望を直接個人が発信できる制度」を設けるなど、当時としては画期的なことを行っていた。重要なのは、いずれも個人に発信・宣言させることで、本人による決断の実現可能性を高めている点だ。
結果、同社はあまたの新規事業を立ち上げ、高成長を遂げた。「決断をしたら発信する」「発信によって自ら機会を創り出す」「機会によって決断を実行に移す」という一連の動作を、社をあげて実践していたのだ。
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