それが、店舗網が拡大して従業員が増えると目が行き届かなくなり、業績が思うように上がらないと、原因を従業員のせいにしていました。原さんとの議論で創業時の気持ちを思い出し、それが感謝の言葉につながったのです。社長自ら現場で闘っている社員を褒めること。それが続けば人が変わりチームが育ちます。
結果として数字もおのずとついてきます。この会社は、わずか3カ月で前年対比120%の売り上げを達成したそうです。
「ほめ言葉」が業績アップにつながる
会社の業績を上げる方法はいろいろです。設備を更新する、組織長を異動させる、評価を業績比例にする……。あるいは、製造工程を見直したり、最近では物流コストの削減も話題になります。しかし、こうした表面上の改善では思ったほどの効果が出ないこともしばしばです。そこで原さんが注目したのが、現場を預かる従業員の内面でした。キーワードは「ほめ育」。従業員を褒めて育てることを最優先にしたのです。
元陸上自衛隊の心理教官の話で、最近心に残った言葉があります。彼は、ドラえもんの1エピソードを引いて、内面の重要性を説いていました。
「ドラえもんのため、のび太がガキ大将のジャイアンとけんかする場面があります。のび太はいくら殴られても蹴られても、ジャイアンに食らいつき、最後はジャイアンが音を上げてしまいます。現実の戦闘場面でも、同じことが起きます。戦闘能力が同じならもちろん、劣っていても、気持ちで負けなければ戦いに負けません」
要は、「内面」が勝負ということです。では内面が重要として、なぜ「ほめること」が効果的なのでしょうか? 原さんはその理由を、人は褒められるために生まれてきたから、と言います。
なお原さん自身、2017年1月、東洋経済オンラインで2回、この「ほめ方」についての記事を書かれています(「ほめ方の本質を知らない人が損していること」「ほめ方が下手な人に共通する残念な考え方」)。そして、最近の著書『たった一言で人生が変わる ほめ言葉の魔法』では、さらに詳しく「ほめ方のコツ」や「ほめることの効用」を述べています。褒めるためには、相手が大切と思うことを自分も大切に思いながら褒めねばならない。
そして脳にとって褒められることは金銭的報酬に匹敵する社会的報酬である、といった言及もあります。また、相手を褒めるにはまず自分の中をプラスの感情で満たすことが先決として、パーティの余興で見掛けるシャンパンタワーの例を挙げます。頂上のグラスがプラスの感情というシャンパンで満たされれば、それが「ほめ言葉」となって下のグラスに流れ、周囲の人の気持ちを満たすのです。今、暗いニュースが世にあふれネガティブな感情が支配しがちですが、そんな時代だからこそ、良いところを探して褒める習慣を身に付ければ、人間関係も改善し、企業の業績も上がるのです。
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