40歳女性社長が体現した子育てママの理想郷 保育付きシェアオフィスが「働き方」を作る

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1階にはゼロ歳児たちの保育スペースがある

「働きたいと考える女性のすべてがフルタイム勤務を望んでいるわけではありません。働きたいけど、子どもとの時間も存分に取りたいと考える方や、大切な家族の介護をされている方もいらっしゃいます。そんな方たちが少しでも時間を有効に使えるように働ける環境を整えること、ゼロか100かしかない働き方ではなく、多様な働き方をサポートすることが私たちの使命です」(高田)

高田によれば、2013年以降フリーランスとして働く女性たちが増えてきた。それは女性に限らず、若い世代の男性にも広がり、いわゆるノマドワーカーと呼ばれるライフスタイルの誕生へと波及した。2016年末の電通過労死事件を発端として働き方改革が喫緊の課題となり、経団連企業が軒並みその方向へ舵を切ったことで、社会の認識が一気に進んだ感がある。

その必然の結果としてリモートワークへの取り組みが進むが、大企業が自前のリモートワーク施設を持つのは一苦労だ。利用者の数や利用形態が事前に読めず、ランニングコストも安くはない。そのような企業に向けて登録枠を設けるマフィスには、施設としての完成度の高さもさながら、サービス設計の柔軟さにも熱い視線が注がれ、大企業からの見学が引きも切らない。

不可能を可能にした「江副浩正の経営DNA」

高田は、子育て関連事業の女性起業家としては少々異色の経歴を持つ。大阪市立大学生活科学部居住環境学科を卒業後、いわゆる就職氷河期の「底」と呼ばれた時期の就職活動を経て、スペースデザインへ就職。リクルート創業者の江副浩正氏が、知る人ぞ知る不動産デベロッパーだ。世間を騒がせてしまったリクルート事件後も、その天才的な都市計画のセンスを生かしてプライベートで作っていた。

興味を持ったきっかけが、資料を見て「社員30人なのに資本金60億円って、どういうこと?」。実はそのスペースデザイン、社員は「永遠の少数精鋭組織」との考え方のもとに集められた精鋭中の精鋭で、「都市生活を変えてゆく」と野心的な不動産企画でたたき上げられ、江副氏の直感的な意思決定を傍らで学んだ先から続々と独立・起業していくという、ユニークな風土を持っている。

高田は最終面接で江副氏のお眼鏡に叶い、東大・京大・早慶卒の社員だらけの中に入り込んだ。何かあれば江副氏に連れられ、社員合宿兼ミーティングをする、クリエイティビティを刺激され続ける環境で社会人生活を送った。

次ページ起業の大本となるアイデアが浮かんだが…
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