「自動運転なんて必要ない」と考えている人へ

ベンツで未来研究を行う社会学者に聞く

AIにはひらめきがない。その点で、人間の脳とAIは根本から違う。自動運転といっても、それは人間の運転をAIが100%再現できるという意味ではない。マンカウスキー氏は人間の再現を目指すエンジニア対し「クルマを人間に近づける前に、人間とは何かを定義せよ」と語りかけるのだそうだ。人間とひと口に言っても皆違う。ボディ・ランゲージもジェスチャーも行動も違う。そのうえで、人間が担う領域と、機械に任せる領域を考える必要があるということだろう。

自動運転の先にあるものは?

「人間がこれから強化すべきは社会的能力や創造性だ。いつまでたってもAIが判断できない局面はいくらでも存在する。例えば、交差点にさしかかり、信号は青だが道路の真ん中に何かがある。こういう場面では、自動運転車両は人間に『あれは何?』と質問すべきだ。それに対し人間は『けが人がいる』『デモをやっている』といった情報を与える。それを受けて車両は『待つ』『けが人を助ける』『迂回する』などのオプションを示す。つまり判断には社会的な相互作用が必要で、それはこの先も人間が担う領域だ。判断した後の振る舞いはクルマに任せればいい」

メルセデスは古くから人間研究に力を入れているが、マンカウスキー氏のこういう考えを聞いていると、自動運転が近づいてもそれは変わらないのだということがわかる。

自動運転はT型フォードが変革した以上に社会を変革するポテンシャルを秘めている。もっと言えば、自動運転はAIによるイノベーションの序の口に過ぎないのかもしれない。この先のシナリオはマンカウスキー氏も予測不能だという。ただし、人間は実現できない未来を想像しない。F015のような自動運転車両は社会にどのような価値を生むのか。想像の翼を広げることが豊かな未来を引き寄せることになりそうだ。

アレキサンダー・マンカウスキーは自動運転の夢を見るか!?──メルセデス・ベンツで未来研究を行う社会学者に聞く

(写真:Mercedes Benz Edit _ Satoshi Shiomi)

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