「売れすぎスバル」を悩ます次世代車開発競争 まもなく就任7年目、吉永泰之社長に直撃

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スバルが米国に先駆けて日本で発売した新型SUV「XV」は好調な出足だ(撮影:尾形文繁)
世界販売台数は5年連続で過去最高をたたき出し、2016年度はついに100万台の大台を突破したSUBARU。4月には「富士重工業」から社名を変え、新たなスタートを切った。
販売台数だけではない。直近の業績を見ると、4期連続で2ケタの営業利益率を達成するなど、高い収益性もスバルの強みだ。SUV(スポーツ多目的車)を中心とした商品群や運転支援システム「アイサイト」に象徴される安全性能を武器としている。
だが、稼ぎ頭の米国市場には減速感が漂い、自動車業界ではかつてないスピードで技術革新が進んでいる。これらが重荷となり、2017年度は為替の影響を除くと営業利益は実質減益となる見通しだ。外部環境が激変する中でスバルの目指すものに揺らぎはないか。吉永泰之社長を直撃した。

ドル箱の米国で逆風が吹き始めた

減速する米国市場と膨らむ研究開発費。吉永泰之社長は現在SUBARUが抱える課題をじっくりと語った(撮影:尾形文繁)

――米国市場では2017年に入ってから毎月、月次販売台数が前年同月を下回るようになってきた。

米国の全体需要は年間1700万台前後の規模感から大きく悪くなるとは思っていない。スバルの場合、新型「インプレッサ」が牽引し、月次でも前年比プラスが続いている。夏頃にはクロストレック(日本名「XV」)も発売する。2018年には3列シートSUVの北米専用車「アセント」を投入する。こうした商品計画があるので、それほど心配はしていない。

――とはいえ、自動車メーカー各社が値引きの原資となる販売奨励金(インセンティブ)を積み増している。スバルのインセンティブの額は業界平均の3分の1以下と少ないが、収益を圧迫する要因になるのでは。

米国の全体需要はもう1年くらい前にピークアウトしていて、自動車ローンの金利をゼロにするキャンペーンを行うなど、人為的に一番いい状態を維持しているというのが実情だ。「72カ月間ゼロ金利」といった極端な販売奨励策をとっているメーカーもある。

当社は対象車種を3つに絞り、ゼロ金利期間を48カ月に抑えるなど、他社よりも穏やかなやり方をとっている。米国は政策金利を上げる方向で議論を進めている。金利が上がる局面でゼロ金利を維持するとなれば、金利上昇分を埋めるインセンティブがさらに増えることになり、負担は大きい。まだどのメーカーもゼロ金利キャンペーンをやめないが、どこかがやめれば、当社もすぐにやめる。

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