「売れすぎスバル」を悩ます次世代車開発競争 まもなく就任7年目、吉永泰之社長に直撃
――自動運転や電動化など、技術革新の大波が押し寄せている。スバルはこの環境変化にどう対応するのか。
ここ最近のスバルの成功は、4~5年前の仕込みがあるからこそ。今、考えているのは2021年以降のための仕込みだ。従来の自動車産業は技術革新が穏やかな産業だったが、ここからは電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)といった電動化や、つながる技術、自動運転、シェアリングといったあらゆる技術革新が一気に押し寄せる。
独ダイムラーは「CASE」(C:コネクティッド、A:自動運転、S:シェアリング、E:電動化)という4つのテーマを掲げ、これらを並列して取り組む。一方で当社のような小ぶりな自動車メーカーは、いっぺんに4つに取り組むことはできない。
経営者がやるべきなのは、この4つの中の優先順位を明確に示すことだ。各国で厳しくなる環境規制への対応は必須なので、E(電動化)の優先順位は一番高い。次に来るのがA(自動運転)とC(コネクティッド=ネットにつながる車)だ。自動運転は運転支援システム「アイサイト」を持っている。これは当社の勝ち技の1つなので力を入れてやっていく。コネクティッドは日系メーカーが遅れ気味なので、追い付かないといけないという思いがある。
研究開発投資は過去最高レベルに
――2017年度は研究開発に1340億円を投じる。過去は長らく続いた500億円弱と比べて3倍の水準だ。加速する先進技術の開発は収益圧迫の一因となっている。
「CASE」の取り組みはすべてカネがかかるもの。自動車業界全体として利益率が悪化する局面を迎えている。当社も今期は研究開発費を200億円増やして、過去最高の1340億円を投じる。かつての50万台規模のままであれば、1000億円を超える開発はできなかった。最初からこの競争に参加できなかったのは自動車メーカーとして辛い。
もし研究開発費を増やさなければ営業増益にすることも可能だが、技術本部がやりたい、ということを押しとどめて増益にしようとは決して思わない。販売台数が100万台を超えた今、将来に向けてやるべき開発をやってほしい。だから昔の3倍の研究開発費をかけてでも、将来を切り開く。あとはやり切れるかどうかの問題になる。おカネがあっても、やってみて負けたらそれが実力ということだ。
――戦ってみた結果、負ける可能性もあるということか。
大きな技術変化が起きている中で、中規模以下の自動車メーカーが生き残れないリスクは当然ある。巨額の開発費がかかるハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)は、中規模のメーカーがゼロからつくることはできない。
そこで絶対必要になるのが、アライアンス(提携)だ。当社は(筆頭株主である)トヨタ自動車との関係が大事であり、PHVもトヨタから教えてもらっている。アライアンスをうまく利用できれば、規模が小さくても面白い戦いができるんじゃないかと思っている。
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