「売れすぎスバル」を悩ます次世代車開発競争

まもなく就任7年目、吉永泰之社長に直撃

――そんな中、北米専用車「アセント」を新たに商品群に加える。打開策になるのか。

開発の議論が始まった当時、出したいと賛成したのは私の知るかぎり、私と日月(たちもり)丈志さん(現・専務執行役員)の2人だけだった。彼は「絶対に造るべき」と言っていたし、私も社長になってから米国のディーラーの話を聞く機会が増え、「なるほど3列シートSUVが必要だ」と思うようになった。

4月のニューヨークモーターショーで発表された7人乗りSUV「アセント」のプロトタイプ版(写真:スバル)

当時はまだ「スバルとは何ぞや」という議論の最中だった。独BMWのような高級車ブランドを目指す戦略を掲げた2000年前後の名残があった。その考え方がしみ付いている人にとっては、スポーティな高級車は多人数が乗る車ではないというイメージだった。

さらに、3列シートSUVを販売するのは米国とカナダだけというのも懸念だったようだ。1車種丸ごとをゼロから開発するのに、北米にしか市場がないのは開発リスクが大きいのではないかと。

実際のところは、北米向けに専用車を開発していると知らせるだけでも、現地ディーラーのモチベーションが上がり販売現場が活気付いた。結果的に、北米でどんどん利益がでるようになって、アセントが出る前に開発投資を回収できるほどの効果があったのではないかと考えている。

新たに「北米事業責任者」を任命

――これまでは米国での供給が足りないなかで、余剰な在庫を持たずに値引きを抑えながら、高い収益性を維持してきた。2016年末に米国工場の生産能力を2倍に拡大したが、供給過剰になる恐れはないか。

マーケティングがどれだけうまくいっても、現場のディーラーに在庫が山積みになれば値引きせざるを得なくなる。そうすると、高い収益性を保つスバルのビジネスモデルが壊れてしまう。

かといって、生産調整はそう簡単にできない。雇用に直結するからだ。だから販売に陰りが出ても雇用を維持するために操業は落とさず、営業部門にプレッシャーをかけて数を売ろうとする。営業部門は値引きに走るという悪循環に陥りやすい。ビジネスモデルを守りながら雇用も守るのであれば、いかに早めに需要に合わせて生産計画を修正できるかが大事になる。

そこでこの4月、人事に手を加えた。今までバラバラだった生産と販売を束ねるため、北米事業全体の統括者を任命した。もし生産台数を抑えなければならないタイミングが来れば、現地で瞬時に判断できる仕組みに変えている。

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