中国で「シェアエコノミー」が大爆発中のワケ 「シェア自転車」人気の背後には何があるのか

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中国インターネット情報センターによると、2016年の中国におけるインターネット利用者数は7.31億人。その中で、スマホユーザーは6.95億人と実に95%を占める。一方、日本はというと、総務省の統計によると2015年末時点のネット利用者は1.04億人で、パソコンでの利用が56.8%でトップ、スマホでの利用が54.3%で2位である(複数回答)。

すでに中国では、モバイルインターネットが圧倒的な主流となり、消費モデルと経済発展の形態に大きな影響を与えていることがわかる。以前、「中国が超速で『スマホ先進国』になれた事情」で紹介したように、いまや中国人は、通勤から食事、買い物から子どもの通う学校への連絡など生活のあらゆる物事をスマホ一つで済ませようとしている。つまり、スマホが完全に社会のインフラになっているのだ。

サービスの利用者も、スマホで移動中などの「すき間時間」に生活上のさまざまな用事を済ませるのが一般的である。家に帰ってわざわざパソコンの前に座り、明日の通勤時のカーシェアリングやシェア食事の予約をすることはしない。生活に密着したシェアサービスと、いつも持ち歩くスマホとは相性がよいことは言うまでもない。

だが、スマホの普及が追い風になったとしても、中国でシェアエコノミーがこれほど爆発的に成長した理由をそれだけでは十分に説明しきれない。

中国人の「合理主義」が追い風に

その背景には、中国人の合理主義志向が大きく関係している。

中国では、よさそうなサービスが出たら、とりあえず使ってみるし、便利な商品が出たら、以前のものは一瞬にして消えてしまう。前例やルールがなくても、自分で道を拓(ひら)けば、制度などは後で追いついてくるという思考法だ。そこにあるのは、自分たちの暮らしをよくすることを最優先にする考えだ。

だから、携帯電話のショートメール(SMS)が登場したら、年賀状はすぐにやり取りされなくなった。年賀状でないと気持ちが伝わらないという人もいるかもしれないが、それでも携帯電話で入力・送信するほうが断然速いし、郵送するよりも安上がりだ。そして、文字数に制限がない中国のネット大手テンセントのメッセージサービスである「QQ」や「WeChat」、米マイクロソフトの「MSNメッセンジャー」が登場したら、年賀状が消えたように、ショートメールの利用者もあっという間にいなくなった。

シェアエコノミーも、中国人の合理主義にピッタリな考えである。リスクがあっても、手持ちの資源を有効活用することで、提供者は利益を、利用者はお得を得るものだ。人気にならない理由がないのだ。

通勤時の乗り合いアプリ(自動車で通勤する人と同乗したい人をマッチングするアプリ)が登場したら、変な運転手にぶつかるリスクを考えてやめるのではなく、「タクシーより安いし、満員電車に乗らなくて済むのは最高!」と考え、安いコストでの楽々通勤を合理的に選択する。そして、実は出費を減らせるという以外のメリットも見据えている。利用者はほとんどがビジネスパーソンなので、車での乗り合いをきっかけに、今後の仕事で役立つつながりができるかもしれない、と考えているのだ。

新しい分野で事業を始めることには、確かに失敗するリスクも大きい。ただ、失敗するおそれがあるからといって何もしないことの方が、企業にとっていちばんの危機だと中国人は考える。取りあえず事業を立ち上げてみて、うまくいかなければ、直ちに軌道修正するし、見切りも早い。

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