中国で「シェアエコノミー」が大爆発中のワケ 「シェア自転車」人気の背後には何があるのか
日本ではビジネスを進める際に、リスクの有無やその程度が非常に重要視される。だが、中国人のビジネスでは「リスクがある」「ルール違反になる可能性がある」「前例がない」といった要素があっても、考慮は二の次にされるのだ。
日本人からみると、中国人のビジネスは「『走りながら考える』要素が多すぎる」「ルールを守ろうとする考えが希薄」「朝令暮改で乱暴」に映るかもしれない。しかし、一瞬のうちに状況が変化する中国社会では、それくらいのほうが合理的なのだ。
シェアエコノミーが解決した社会課題
もちろん、スマホ社会と合理主義の意識だけでは、シェアエコノミーはそこまで急速に発展しない。もう一つの理由は、中国に存在する社会問題を解決する手段となったからだ。
![](https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/3/e/570/img_3e2db5e992a98931c143d4a5cf47c56462301.jpg)
シェア自転車もその一つの例である。所得増や、政府の自動車販売促進政策等の結果、中国の自動車保有台数は急増したが、深刻な渋滞問題をもたらした。公共交通機関も日進月歩で整備されてはいるが、それでも都市部への人口集中の速度には追いつけていない。
特に駅から自宅までの「ラスト1キロメートル」の移動をどう効率化するかは政府にとっても大きな課題だった。自転車は最初に浮かぶ選択肢ではあるが、盗難に遭うことが多いのが、消費者が購入するうえでの大きなネックであった。自転車盗難は、中国で長く問題になってきた。筆者の知人一家では、今までに合計三十数台の自転車が盗難に遭った。高額な電動自転車も2台含まれていて、2台目が盗まれた後、不便だったが、自転車を再購入することをさすがに断念したという。
この課題を解決してくれたのが、シェア自転車だった。盗まれる心配がなく、メンテナンスの手間もかからない。QRコードをスキャンすれば、いつでも使えて乗り捨てもできる。シェア自転車は、この悩ましい「ラスト1キロメートル」問題を見事に解決できたのだ。
この連載ではつねに、対中国・中国人ビジネスのヒントを示すことを意識している。今回お伝えしたかったのは、中国向けのネットサービスを考えるなら、スマホをベースにしなければならないこと、中国人の合理主義志向や社会問題を理解する必要があるということだ。そして、それだけではなく、中国で起きているシェアエコノミーのイノベーションは、日本国内の課題解決の参考にもなりうるのだ。
たとえば、宅配便の人手不足問題。日本では、ECの利用が盛んになったことで宅配物が急増し、宅配会社やその社員の負担が大きくなっている。ECによる荷受量の増加は、中国でも見られる問題だ。このような物流における人と物の不均衡を解消する「人人快送(レンレンカイソン)」というサービスが生まれた。
このサービスは、帰宅のついでに自宅の方向に配送する荷物の宅配作業をして少し報酬をもらう、というサービスである。配達エリアにいる一般人が宅配員の仕事を担うことで、宅配業界の人手不足の問題を解決できる可能性がある。
発展途上国で開発されたイノベーションが先進国で導入される現象は、「リバース・イノベーション」と呼ばれる。中国で生まれたシェアエコノミーのサービスの中には「人人快送」のように日本でも導入を検討する価値を持つものがある。
新興国のイノベーションを研究することは、日本企業のその国でのビジネスチャンスに結び付くことはもちろん、日本社会の課題解決にもつながる可能性がある。中国で隆盛を極めるシェアエコノミーにはさまざまなイノベーションがあり、探せばたくさんのヒントがあるはずだ。
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