その音楽大学のあり方が最近少しずつ変わり始めたのだ。何が変わったのかと言えば、従来の「音楽大学=音楽家育成機関」から、「音楽大学=音楽家と音楽的な教養を持った人材の育成機関」へと変化し始めたのだから興味深い。
その背景には、少子化の影響によって音楽大学を目指す生徒数が減少しているのと同時に、音楽大学を出ても音楽家にはならずに一般社会へと進む学生の存在感の大きさを、学校側がようやく認識し始めた点にもあるともいえそうだ。
一般社会へ進む音楽大学卒業生にとって必要な事とは?
音楽大学、特に私立の音大にとって、多くの優秀な生徒を集めることは学校経営上の重要なミッションだ。そのためには、より魅力的な学校であることを受験生にアピールすることが求められる。優秀な教授陣をそろえて高度な専門教育を行うことは、各音楽大学にとっての必須案件であることから、最近では国内外の一流演奏者が教壇に立ち、個人レッスンを施すこともごく当たり前のことになりつつある。
そうなると、新たに問われるのは音楽以外における取り組みだ。たとえば東京音楽大学では、上智大学との単位互換による選択科目を設定している。東京音楽大学の学生が上智大学で一般教養を学び、上智大学の学生は東京音楽大学で音楽を学べるというシステムは、音楽大学を経て一般社会へと進む学生にとって極めて刺激的な試みだ。
同時に、音楽家を目指す学生にとっても、経験値や視野、さらには人的ネットワークを広げるうえでの大きなきっかけになりそうだ。もちろん上智大学側から見ても、音楽大学の専門教育をカリキュラムに組み込めることはとても魅力的に違いない。その考えをさらに一歩進めたプロジェクトが、今回新たに導入された「ミュージック・リベラルアーツ専攻」の存在なのだろう。
初めての募集においては、入学後に用意される魅力的なカリキュラムの効果もあって、予想以上の人気だったという。「これまで、音楽大学と一般大学のどちらを選ぶか迷った結果、一般大学に進学していた優秀な学生が音楽大学に来てくれた。
つまり、「上智大学に行くような学生が東京音楽大学に来てくれるようになったのです」という学校側の喜ぶ声も聞こえてくる。いまや英語力は、一般学生はもちろん海外留学を想定する多くの音大生にとっても必須案件なだけに、英語と音楽の両方を高いレベルで学べる「ミュージック・リベラルアーツ」の存在意義は極めて高い。
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