東京音楽大学で今年度からスタートした「ミュージック・リベラルアーツ専攻」がとても興味深い。英語と音楽をテーマとした極めてシンプルな試みながら、このプロジェクトが今後の音楽大学のあり方を大きく変える可能性を秘めているように見受けられる。さて、いったい何がキーポイントなのだろう。
音楽と英語の二刀流を養成
「ミュージック・リベラルアーツ」の内容について、東京音楽大学受験生のために用意された学校案内には、「人間の根源的な知と技の結晶である音楽を専門に学びながら、実践的な英語力を身につけ、知性を磨き、国際社会に貢献できる人材創り」と記されている。簡単にいえば、“音楽の専門教育を受けながら国際社会で通用する英語力も同時に身に付けましょう”ということなのだろう。
そのカリキュラムをのぞいてみると、音楽大学ならではの個人レッスンを中心とした音楽専門教育科目(ミュージック)とは別に、英語の専門教育科目(リべラルアーツ)が用意されている点が目新しい。しかも、そのリベラルアーツ科目はすべて英語で行われるのだ。これは生徒たちにもかなりの英語力が求められるに違いない。
これまでの音楽大学の入学システムは、ほとんどの場合実技優先。音楽家の育成を最大の目的とする音楽大学なのだからそれは当然なのだが、裏を返せば、「実技さえ優秀であれば勉強の力は問わず」といった風潮がまかり通っていたことも否めない。
もちろん個人差はあるにせよ、音楽大学の付属高校から音楽大学に進学して音楽家となった知人曰(いわ)く、「音楽以外の一般教科に関しては、私たちは中学止まりだから」などと言った冗談も聞こえてくるほど音楽一辺倒な生活を過ごしたようだ。言い換えれば、それだけ音楽に専念して実力をつけなければ、プロの音楽家にはなれない厳しい世界であることも事実なのだろう。
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