ドイツ、サイバー攻撃・偽ニュースに戦々恐々 9月の連邦議会選挙を控えて懸念広がる

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ドイツ当局者が特に懸念しているのは、2015年にドイツ議会に対して行われたサイバー攻撃で流出したメールが、9月の選挙前にリークされることだ。関係者2人によると、攻撃された10数件のアカウントのうち、1つはメルケル首相の議会用のアカウントだった。首相の執務用メインアカウントは無事だった。

メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)のペーター・タウバー事務局長はその後、ランサムウェア(身代金ウィルス)の攻撃に遭ったと、その関係者の1人は言う。ランサムウェア攻撃では、送り付けられたウイルスがコンピューターをロックし、再開するために攻撃者に「身代金」を払うよう要求される。

「われわれは、デジタル化に圧倒されている。油断してはならない。セキュリティを強化したと言われているが、ドイツは実際には、来るものへの備えがたりない」。イスラエルのサイバーセキュリティ会社、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズで在ドイツのディルク・アレント氏はそう指摘する。

ロシアのハッキンググループの標的に

ドイツ政府や政党幹部は、2015年のサイバー攻撃で誰のアカウントが被害に遭ったかを明らかにしていない。

BSIは、特にメルケル氏とCDUが、「APT28」と呼ばれるロシアのハッキンググループの標的になっているとみている。APT28は、クリントン氏のメールのハッキングを実行したとして米政府高官が非難したグループだ。

「ポーン・ストーム」や「ファンシー・ベア」という名でも知られるAPT28が、2015年の独議会と、16年のCDUに対する2度のハッキングの背後にいる、とBSIはみている。

CDUと連立パートナー社会民主党がそれぞれ運営するシンクタンクを、APT28が3月と4月に攻撃した、とセキュリティー大手トレンド・マイクロは指摘する。同社は、APT28はマクロン氏も標的にしたと述べている。

ロシアは、他国の内政に干渉することはないとして、一連の攻撃への関与を否定している。ロシア政府の報道官は、APT28の背後に誰がいるのか見当もつかないとして、「どんな連中か知らないし、われわれとは何の関係もない」と述べた。

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