横浜・中村紀、40歳でもフルスイングの理由 ポジティブを貫く「勝者のメンタリティー」

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左手首の負傷は、勲章

若かりし日の中村は、思い切りバットを振ることで不安を解消していたという。再び自著から引用する。

「打席の中では、もちろん相手がありますから、打てないんじゃないかなと不安が沸いてくることもあります。でも、それを表に出したらダメ。じゃあ、どうするかといったら、やっぱり振ってその不安を振り払っていくしかない。だからいつも初球からガンガン振るつもりで打席に入っています。そういう姿勢で立てば、凡打になっても次の打席で生かされる」

1996年頃から、中村はフルスイングの代償で左手首の負傷に悩まされるようになった。しかし、痛みも前向きな気持ちで受け止めた。

「バットを振り込んだからこそ手首が悲鳴を上げて、ポキッと折れた。逆に、『勲章やな』と思いましたね。糧になると感じましたよ。負傷を通過して、生き残れるか、生き残れないかを判断されたのでしょう。かろうじて、生き残れました(笑)」

プロ入り9年目の2000年、中村はついに本塁打王を獲得した。こだわってきたフルスイングは、40歳になった今も貫いている。

「闘牛は赤いものを見るとバーッと追いかけるでしょ? 僕は白いものを見るとフルスイングしたくなるんです。この気持ちがあるかぎり、まだ野球をできると思います」

中村の生き様は、多くの人にはなかなかマネできないものだ。しかし、彼は自身を貫き、前向きなイメージを抱き続けたからこそ、数々の困難や理不尽な出来事も乗り越えることができたのだろう。

本物の超一流アスリートが持つメンタルは、凡人にも大いに参考になる。

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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