鎌倉で話題の図書館・カフェの共通点とは? ユニークな発想で地域活性化に貢献

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大瀧氏が準備に加わった2015年9月時点で、どのような料理を出すのかは具体的に決まっておらず、どちらかというと器の準備が先行して進んでいた。しかし、まずは提供する料理を決め、料理に合った食器を作るべきと提案し、遅れていた料理メニューの検討が始まった。

そんな中から生まれたのが、現在、「カフェ 倶利」で提供しているメニューだ。料理のコンセプトとして、大瀧氏がまず挙げるのが、「鎌倉彫を作る工程の長い時間と調和するような料理」というもの。

鎌倉彫は、木材を乾燥させ、漆を掻(か)き、材料を彫り、漆を塗り、磨き上げるという長い時間をかけて生まれる。その鎌倉彫の器に合う料理は、単に材料を仕入れて調理して出す、効率のみを考えた料理ではない。

「倶利の玉手箱」2500円(筆者撮影)

そこで行き着いたのが、干し野菜や高野豆腐、湘南のアラメなど手間暇かけて作られた乾物を使った料理だ。

太陽の恵みをいっぱいに受けた栄養価の高い食材を、ゆったりとした時間を感じながら食べてほしいという思いは、最初に考案したメニューである「刻(とき)御膳」の名前に託されている。

そのほか、子どもから大人まで誰でも食べやすく、鎌倉彫の器が洋食にも使えることを発信する意味から、手ごねハンバーグのメニューも考案して、話題になった。

また、前日までの予約が必要だが、高野豆腐や鎌倉野菜、海の幸などが詰まって、宝石箱のように見た目も美しい「倶利の玉手箱」も人気が高い。

各セットメニューには、鎌倉建長寺発祥の汁物「建長汁(けんちんじる)」が付き、“鎌倉らしさ”に一役買っている。

実用的な意味もある「彫り」

せっかく鎌倉彫の器でいただくのだから、料理だけでなく器にも注目したい。注目すべきポイントを後藤氏に聞いた。

「鎌倉彫は彫りが命と言われるが、これは装飾的な意味合いだけでなく、刀痕があることで滑りにくくなるという実用的な意味もある」と言い、「彫りがあるからこそ使いやすい、と言われるものを今後も作っていきたい」と話す。

カフェとして営業するならば、おいしいコーヒーをゆったりと飲んでほしいとの思いからこの形の器が誕生した(筆者撮影)

また、鎌倉彫カフェでは料理のほか、鎌倉彫のカップでコーヒーもいただくことができるが、この器も専用に作った。たっぷりのコーヒーをゆったり飲んでもらうためにはどうしたらいいかを考え、カフェオレボウルや日本茶の茶碗をイメージして検討した結果、今までの鎌倉彫にはない形の器ができたという。

実際に両手で包むようにコーヒーが入った器を持ち上げてみると、木の温もりだけが感じられ、陶器と異なり、熱さが直接手に伝わらないのがいい。

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