鎌倉で話題の図書館・カフェの共通点とは? ユニークな発想で地域活性化に貢献
そして、起業からおよそ1年半が経過した2017年4月現在、「カマゾウ」には200人近い会員が集まり、蔵書数は1200冊以上となった。
まだまだ経営的には楽な状態ではないというが、7割以上の会員が2年目の契約を更新し、新規会員も増え、会員主催のワークショップが毎週行われるなど、その盛り上がりは地域のコミュニティに欠かせない存在になりつつあるのは確かだ。
この「カマゾウ」のビジネスには、2つのキモがあると鈴木氏は話す。
ひとつは、もちろん「会員制」ということだ。“カマゾウの会員”というくくりで、世代や性別、仕事などを超えて同じ立場で話ができ、普段の生活なら出会わないような人たちが友達になっていくのが、見ていて面白いという。
喫茶店や一般の図書館なら、店員や職員と客がつながることはあっても、客同士がつながることは、なかなかないだろう。
2つ目は、いつ来ても鈴木氏という「同じ人」がいることに意味があるのではないかという。安心感にもつながるし、「湘南経済新聞(みんなの経済新聞の湘南版)」の記者なども担当する鈴木氏は、豊富な地域の話題の情報源でもあるのだ。
このような「カマゾウ」の会員コミュニティからは、これまでさまざまなものが生まれた。その最たるものが2017年1月に出版された書籍『鎌倉千年の歩み 段葛からのオマージュ』だ。
著者の神奈川新聞出身のジャーナリスト、浅田勁(つよし)氏も「カマゾウ」の会員。同書は、鶴岡八幡宮の参道「段葛(だんかずら)」をテーマに、浅田氏が神奈川新聞に連載したコラムがベースになっている。
コラムに書き切れなかった取材で得た情報も多く、もったいないので冊子にまとめたいという話を連載中から鈴木氏としていた。
そして、連載終了後に、表紙の挿絵を会員で水彩画家の矢野元晴氏、写真の一部を会員で写真コンテストの受賞歴もある佐久間芳之氏が担当するなど、会員がそれぞれの得意分野で協力し合い、とんとん拍子に出版の話が進んだという。
さて、「カマゾウ」の今後についても鈴木氏に話を向けてみたが、「皆で作っていく図書館を目指しており、どのような場所になるかは会員次第」だという。鎌倉という多士済々が集まる土地柄であることも、「カマゾウ」の面白さに拍車をかけているように思う。
「彫り」が特徴の鎌倉彫
「鎌倉彫」という伝統工芸をご存じだろうか。漆(うるし)を木地に塗る「漆器(しっき)」に分類され、茶器や盆、食器、文具箱、手鏡などさまざまな品が作られている。
鎌倉時代の大仏師・運慶(生年不詳~1224年)が祖と言われる鎌倉の仏師たちが、仏像や仏具を彫り続けて来たのが鎌倉彫の源流で、明治初期の廃仏毀釈(きしゃく)で仏師たちが職を失い、生活用品の製作を手掛けるようになって生まれたのが、現在の鎌倉彫である。漆器製品と言えば会津や輪島なども有名だが、鎌倉彫は仏師の流れをくむことから、“彫り”が際立っていることが、最大の特徴になっている。
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