鎌倉で話題の図書館・カフェの共通点とは? ユニークな発想で地域活性化に貢献

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“会員制図書館”というビジネスモデルは、蔵書室室長である鈴木章夫氏の過去の仕事経験の中にヒントが眠っていた。

鈴木氏は広告代理店勤務などを経て、2010年から“鎌倉らしさ”にこだわった新しい観光資源を発掘し、「着地型観光」のモデルコースを作成して、試験的にツアーを実施する業務に携わった。

かまくら駅前蔵書室室長の鈴木章夫氏

このツアーは、観光客のいない朝夕の時間帯に寺院や地元のユニークな企業を訪問したり、鍛冶工房で作品づくりを行うなど、レアな体験ができる内容で人気があったが、東日本大震災の発生により、半年余りで中止となった。

このときのツアー参加者は、通常の観光は卒業したコアな鎌倉ファンが多く、「鎌倉の本が出ると、ついつい買ってしまい、家がいっぱいになる」「1回限りのツアーではなく、継続的に鎌倉について情報交換できる場があればいいのに」といった声が寄せられ、それが後々まで鈴木氏の頭に残っていたという。

その後、鈴木氏は横浜のNPO法人に活動の場を移すが、その職場はシェアオフィスだった。そこではさまざまなジャンルの人々が出入りする中で、まったく知らない人同士がつながって、仕事を一緒に始めたりする様子を日常的に目の当たりにしたという。

そして、現在、「カマゾウ」が入居する「起業プラザ」ビルの当時のオーナーから、「3階の部屋が10年間使い手がなく空いているので、何かやってみないか」という声がかかったのが、2015年3月末。横浜のNPO法人の仕事や、その後に担当した東北の被災地支援の仕事などが、ちょうど一区切りした時期だった。

エレベーターもない古いビルの3階では、店をやっても商売として成り立たないというのが常識だが、初めてビルの階段を上って部屋を見たとき、鈴木氏は、まるで“秘密基地”のように感じ、ワクワクしたという。

部屋を見てから2~3日のうちに、これまでの数年の経験を集約し、思いついたのが、さまざまな鎌倉の書籍や人々が集まる「会員制の図書館」というビジネスモデルだった。

クラウドファンディングで資金を調達

この場所で普通のブックカフェを開いても、儲からない。おそらく、1日に1人か2人来るのが関の山だろう。

しかし、会員制であれば、この場所自体が目的となって客がリピートするだろうし、来ても来なくてもある程度の収入は確保できるということで、起業に踏み切ることを決断した。

そこで、特に事例研究なども行わず、クラウドファンディングで80万円以上の資金を調達し、準備期間わずか数カ月で、一気に2015年8月のオープンにこぎ着けた。

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