鎌倉で話題の図書館・カフェの共通点とは? ユニークな発想で地域活性化に貢献

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この鎌倉彫の主な活動拠点となっているのが、室町時代から近年までの作品を鑑賞できる「鎌倉彫資料館」や鎌倉彫教授会が主宰する趣味の鎌倉彫教室などが入る「鎌倉彫会館」だ。1968年に建てられた「鎌倉彫会館」は、このほどリニューアル工事を行い2016年3月に完工したが、その際、津波や地震などの災害から貴重な作品を守るために、それまで1階にあった資料館を3階に移した。また、展示スペースを広めにし、展示ケースや照明を一新するなどして、よりゆったりと作品を鑑賞できるようにもした。

そして、空いた1階フロアを活用したのが、ここで紹介する、鎌倉彫の器で食事やコーヒーが楽しめる「鎌倉彫カフェ 倶利(ぐり)」だ。

歴史的に、鎌倉彫は仏具、茶道具、盆や茶托、硯箱などとして使用されてきたが、直接、料理や汁物を盛る器として使われたことがほとんどなく、その意味でも新たな試みとなった。

鎌倉彫をより身近な存在にしたい

鎌倉彫会館館長の後藤尚子氏(左)とコーディネーターの大瀧麻美氏(筆者撮影)

鎌倉彫会館の館長でありカフェの責任者でもある後藤尚子氏は、以前から、鎌倉彫の器で食事ができる場所をつくりたいと考えていた。

伝統工芸品ということで、使うのがもったいないと、しまい込んでしまう人が多いため、鎌倉彫を実際に手に触れて使う場を設け、鎌倉彫をより身近な存在として感じてほしいと常々思っていたという。しかし、場所の問題や、器の制作にも多額の費用がかかることなどから、話はなかなか進展しなかった。

このプランが一気に具体化したのが、会館のリニューアルに地域活性化を目的とする国の補助金が使えるかもしれないことがわかってからだ。「鎌倉彫を通じて地域の人々や観光客が交流する場」としてカフェを位置づけ、商店街を含む周辺地域を活性化させるという内容で、地元商店会と共同で補助金を申請した。

補助金が下りることが正式に決まったのが2015年7月で、リニューアルオープンのわずか8カ月前。ここから、内装の設計、家具の選定、器の製作、カフェメニューの考案など、やるべきことが山積みの中を一気に駆け抜けることになった。

後藤氏にとって、カフェの経営はもちろん初めての経験となる。そこで、器のデザインをはじめ何人かにアドバイザーを頼んだが、その中で、カフェの準備を中心に力になり、現在もコーディネーターの立場でカフェ運営に携わるのが大瀧麻美氏だ。

大瀧氏はこれまで、新規にカフェをオープンしたいという人向けに、コンセプト決めから内装などの準備、さらにオープン後の経営管理まで含めた内容を講義する「カフェスタイリスト講座」の講師を担当するなどしてきた、いわばカフェ立ち上げのプロだ。

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