「所得連動返還型奨学金」のメリットと課題 2017年度から政府が高等教育支援策を拡大
世はまさに入学シーズン真っただ中。そんな中、大学進学を検討する若者の中には「自分も奨学金があれば大学に行けるが、将来、しっかりした収入を得て返済できるか不安だ」と思う者も少なくないだろう。そんな人に朗報がある。将来の返済負担の不安を和らげる「所得連動返還型奨学金」を日本学生支援機構がこの2017年度からスタートさせたのだ。
安倍晋三政権は1億総活躍プランの一環として奨学金制度の拡充を掲げ、3月末に関連法案が可決した。大きな目玉は、給付型奨学金の創設(私大・自宅外で月額4万円、1学年当たり2万人が対象、本格実施は2018年度入学者から)と無利子奨学金の貸与拡大だが、3本目の柱となっているのが、この所得連動返還型奨学金の創設だ。
所得連動返還型奨学金は文字どおり、将来の所得水準に応じて返済額が変動するものだ。たとえば、私立大学自宅生で一般的な月額5.4万円が貸与されるケース(無利子奨学金)を基に考えてみよう。
低年収なら月々の返済額は低く抑えられる
この4年間の貸与総額は約260万円。これを15年間で返済するため、従来からの定額型では返済月額は1万4400円になる。これに対し、所得連動型では卒業後、毎年の課税対象所得の9%分を返済する。具体的には、年収200万円(課税対象所得62万円)なら月額4700円、年収300万円(同119万円)は同8900円、年収400万円(同179万円)は同1万3500円、年収500万円(同246万円)は同1万8500円、年収600万円(同313万円)は同2万3500円といった具合だ。年収144万円以下は、一律で最低返済月額2000円を返済する。
このように年収400万円強以下なら、定額型より返済負担が軽くなるのはおわかりだろう。年功序列の賃金体系の残る日本の企業では、新卒入社当初の賃金は低め。その際の負担を和らげ、その後上がった年収に応じて返済額を増やすイメージだ。
さらに意義が大きいのは、何らかの理由で卒業後の所得が低迷し続けても、返済負担はずっと軽いままになるため、学生の将来所得不安を和らげる効果があることだ。もともと学生には、卒業後の職業や所得について不確実な部分が大きい。日本経済の不透明性がそれにさらに輪をかけているが、所得連動返還型奨学金はそうした不確実性に対する「保険」として機能する。
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