サバも「ナマ」で食べる福岡食文化の真実 食材のクオリティが他県人、外国人を吸引
福岡ではサバを刺し身で食べる。東京の人から見ると、信じられない光景かもしれない。対馬暖流に乗って豊富な魚介類が水揚げされ、野菜や青果の産地もひしめく。福岡は間違いなく“食の宝庫”と言えるだろう。その吸引力は「大阪、名古屋をもしのぐ」という欧州の飲食幹部の声もある。転勤のサラリーマンをとりこにする福岡「ブラックホール」の力の源に迫る。
サバを生食、それが福岡流
「初めて見たときは、目を疑いましたよ。福岡の人って、胃腸がおかしいんじゃないかって…」
そう語るのは、関東出身の40代の男性会社員だ。就職で福岡に転入してきた20年ほど前。居酒屋で同僚たちが「うまい」「うまい」と口に放り込んだ「ゴマサバ」を見ると、しょうゆたれでゴマとあえた生のサバだった。
「私は今も食べません。だって、東京では、生のサバには寄生虫がいて、食べると食中毒になるかもっていうのが常識ですから」
実際、サバなど多くの魚の内臓に寄生する「アニサキス」は、食べて食中毒を起こすと、胃に激痛が走ったり、吐いたりする。
ところが、福岡の「常識」は異なるようだ。その答えは、原因のアニサキスにあった。
魚介類の寄生虫症を研究している東京大大学院農学生命科学研究科の良永知義教授(魚病学)に聞くと、「アニサキスの種類は日本海側と太平洋側で異なる」という。
どういうことか。結論から言うと、福岡のサバは「食中毒になる確率が低い」。日本海側のアニサキスは魚の内臓から筋肉(刺し身)へ移行しにくいのだそうだ。