長州の女性起業家は「日本酒革命」を目指す

山口で生まれた唯一無二の日本酒とは?

しかし、1度目標を決めたらブルドーザーのように突進する松浦さんがそれでひるむはずもない。錦町という小さな町で親の代から顔見知りという縁を生かし、故郷を愛する者同士、錦町発で世界に通じる日本酒を造ろうと、堀江さんを見事に口説き落とした。

松浦さんは、堀江さんを「日本酒界の異端児」と表す。東京農業大学出身で、代表銘柄である純米大吟醸「金雀」は世界最大規模のワイン品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2016」の日本酒部門で、初出品にして西日本唯一の金賞を受賞する腕を持つ。それだけではなく、古代米でスパークリングの日本酒を造ったり、日本酒を熟成させる研究を進めるなどユニークな面も併せ持っていた。

松浦さんと堀江さん、錦町が生んだふたりの異端児がジャンルを超えて共鳴し、日本酒界の「ドンペリ」を目指すために、前代未聞の酒造りが始まった。

世界展開に向けた秘策

堀江酒場が使う錦川の水は、日本有数の清流で水質はほかのどこにも勝るとも劣らない。この水を生かすコメとして、知る人ぞ知る伊勢神宮で生まれたイセヒカリを選んだ。

伊勢神宮では、10月に行われる神嘗祭の際、代々、御神田で作られたコシヒカリがささげられてきたのだが、1989年、2度の台風によって御神田の稲が軒並み倒されてしまった。そのなかにびくともせずに力強く立っている稲が2株だけあり、不思議に思った宮司が懇意にしていた山口県農業試験場の場長に鑑定を依頼したところ、虫にも台風にも強い新種の稲と判明。イセヒカリと名付けられたこのコメは、「奇跡のコメ」ともいわれる。

松浦さんと堀江氏は、イセヒカリが地元の錦町で栽培されていることに着目した。ただし、酒造りに使用されるコメは酒米といわれ、通常の食用米とは異なるため、堀江氏がイセヒカリで試行錯誤を重ねた結果、18%まで精米すると、酒造りに不可欠のタンパク質の含有率が日本の代表的な酒米である35%まで精米された山田錦と同等になることがわかった。

日本酒で使うコメは、コメの周囲を削っていき、中心に近くなるほど雑味が取れ、香り高くなるとされる。精米歩合35%とは、コメの周りを65%削っていることを表す。堀江氏がたどり着いたイセヒカリの精米歩合18%という数字は、日本でも屈指の数字だった。

堀江酒場で精米歩合18%まで磨かれたイセヒカリ (提供:ARCHIS)
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