名門ワイン「RIDGE」と日本を結ぶ深すぎる縁 老舗カリフォルニアワインの奇跡の物語

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老舗カリフォルニアワイン「RIDGE」でフラッグシップワインの樽試飲をする石窪俊星氏(写真:筆者撮影)

カリフォルニアワインと言えば、老舗のナパヴァレー「Stag's Leap Wine Cellars」「Clos Du Val Winery」、あるいは「ROBERT MONDAVI Winery」といった大手ワイナリーを思い描くことが多いだろう。そうした中で、日本と縁の深い名門ワイナリーとして知られているのが、サンタクルーズマウンテンズにある「RIDGE VINEYARDS(リッジ・ヴィンヤーズ)」である。

このRIDGEについて取材を進めると、単に”縁が深い”という言葉だけでは説明できない、100年の時代を越えて幾重にも絡みつく関係があることがわかった。本稿では、日本とRIDGEの間に存在する運命ともいえる深い関係について紹介していきたい。

30年前から大塚製薬が保有

世界トップクラスの評価を得ているカリフォルニアワインの老舗RIDGE。中でもMONTE BELLOブドウ園で産出される赤ワインは、かつてカリフォルニアワインの地位を決定的なものにした1976年の「パリ対決」から30年後、2006年に行われた熟成ワインの評価においては圧倒的な支持でナンバーワン評価を得たことでも知られる。

このRIDGEを保有しているのは大塚製薬、大塚食品などで知られる大塚ホールディングス。1986年から保有しているので、すでに30年が経過している。海外企業の買収・投資の成功事例として挙げられることも多く、大塚製薬中興の祖として活躍した大塚明彦氏の大きな業績のひとつとしても評価されているものだ。

当時のことを知る大塚ホールディングス幹部によると、「突如、ワイン好きの明彦氏が役員会に話を持ち込み、ほとんどの役員が戸惑う中で明彦氏が独断で買収を決めた」という。あっという間の社長の行動力に驚いたというが、大塚製薬にとっては初の大型M&A。後年になって明彦氏は「1985年末いっぱいの交渉期限ギリギリまで悩み、現地でサインをした際には手が震えた」と話していたという。

しかし買収以降、大塚製薬はオーナー企業として威圧的に振る舞うのではなく、RIDGEの総帥で稀代の名ワインメーカー(ワイン造りの重要意思決定を行うポスト)として知られるポール・ドレイパーを支えるスポンサーとして「よりよいワインを作ること」に集中。一方のドレイパーはワイン造りに、人生を捧げることで明彦氏に応えた。

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