名門ワイン「RIDGE」と日本を結ぶ深すぎる縁 老舗カリフォルニアワインの奇跡の物語
今はまだ限定醸造の域を出ず、日本までは届かない。しかし、長澤鼎に由来するカベルネ・ソーヴィニヨン8000本が100年の時を超え、たわわな実を付け、RIDGEの定番ワインとして復活する日はそう遠くないだろう。きっとそのときには、長澤と石窪氏の故郷、日本の薩摩へも届けられるに違いない。
メルシャンが国税庁発表統計などをまとめた資料によると、国内のワイン市場は1972年に立ち上がりはじめ、明彦氏がRIDGEを買収した1985年は第3次ワインブームが去り、消費が落ち込んでいる頃のこと。国民1人当たりのワイン消費量は510ミリリットルにすぎなかった。
西欧諸国に比べればはるかに少ないとはいえ、ここ数年は低価格ワインの普及によって、この数字は4.2リットル(2014年実績)にまで増加。欧州では1人当たり年間40リットル前後、比較的消費量が少ない米国でも9リットルを超えていることを考えれば、国内のワイン市場はまだまだ開拓途上。今後はさらに拡大していくと見られている。
一方、その間に日本製ワインも栽培・醸造ともに実力を高め、欧州産ワインと肩を並べるレベルにまで達してきた。ブドウ産地でもある山梨県勝沼には多くの志高いワイナリーが集まっているが、2014年に中央葡萄酒造が「キュヴェ三澤 明野甲州2013」でデキャンタ・ワールド・ワイン・アワード金賞、その後、銀賞、金賞と受賞を続けたことも記憶に新しい。
「獺祭」など日本酒の海外消費も増加
その一方で旭酒造の「獺祭」をはじめとする日本酒の海外消費も増加している。旭酒造は生産体制の見直しで、少量生産だった高品位の吟醸酒の安定出荷を実現し、さらに酒造りに向いているとされる山田錦の作付けを新潟などにも広げることで生産量を増やすことに成功した。
また、スパークリング日本酒を世界に広めようと、11月には一般社団法人awa酒協会が発足するなど、2020年東京オリンピックを契機にした日本の酒造り文化輸出に対する機運も高まっている。
石窪氏は「日本の醸造技術を学んだことが、世界でも有数の一流ワイナリーでワインメーカーへの道を開いてくれた。今後はここでの経験を生かし、日本あるいは世界中の醸造家たちと交わることで、よりよい製品の開発へとつなげていきたい」と話す。
あるいはそうした、異なる種類の酒造りが交わっていくことが、日本独自の酒文化を拡げていく近道なのかもしれない。
(一部敬称略)
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